今年は沖縄戦終結から80年の節目の年です。沖縄気象台の関係者の方々は毎年6月23日の「慰霊の日」に、糸満市伊原の「琉風之碑」で追悼式を行っています。


琉風之碑=2024年6月23日、糸満市伊原 ※筆者撮影

 激しい地上戦の中、最後まで気象観測、通報を続けた沖縄気象台職員の23名がたどり着き、砲弾を避けた待避所に琉風之碑が建っています。琉風之碑は糸満市の「ひめゆりの塔」から500メートルの所にあります。
 昨年の慰霊の日の追悼式に弊社の森田正光と参加させていただく機会があり、関係者の皆さまから話をお聞きしました。

琉風之碑での慰霊祭に参加した弊社の森田正光=2024年6月23日、糸満市伊原 ※筆者撮影

 当時の沖縄気象台職員の任務は、九州や台湾から沖縄に飛び立つ特攻隊のために、沖縄の気象情報を通報するもので、測器と目視による観測でした。1945年5月25日に沖縄気象台は業務停止しましたが、極東天気図にはその後も通報記録があり、6月15日以降は軍気象隊によるものだそうです。

㊧1945年5月25日天気図㊨1945年5月26日天気図 (気象庁提供)

 気象庁は今年、気象業務150周年の節目を迎え、これまでの気象業務の歩みを気象庁のホームページに『気象百五十年史』として掲載しており、沖縄戦における沖縄気象台職員のことも記録されています。一部を引用します。
沖縄戦における沖縄地方気象台職員
 昭和19年10月10日早朝、沖縄本島に初めての米軍による大空襲があり、那覇市街地をはじめ、小禄、嘉手納、読谷の飛行場が爆撃を受けた。その日の宿直通信士は福岡管区気象台にあて「空襲、空襲、敵機来襲」と打電したのち、官舎居住職員、家族と共に防空壕に避難した。気象台は幸いにして爆弾も受けず無事だったが、大多数の職員は那覇市居住者であり、3日3晩燃え続けた火災で家を焼失した。「10・10空襲」と呼ばれるこの日から、沖縄地方気象台職員の悲劇は始まった。(中略)
 4月1日、中部西沿岸から米軍は上陸を開始した。
「鉄の暴風」とも呼ばれるほど、砲撃が熾烈に吹きすさぶ地上戦が始まり、上陸地点の近くにいた首里の気象隊と共にいた職員には、やっとのことで北部に避難した職員もいた一方で、命を失った者もいた。小禄の飛行場は日本海軍基地であったので、陸海空から熾烈な攻撃を受けて占領され、航空気象観測所の職員は全員海軍部隊と行動を共にして、迫撃戦に参加した。
 小禄壕では、送信機の部品が故障し送信不能になったことから、那覇無線局から送信機の修理部品を命がけで入手し、観測成果の通報を続けていた。5月17日、米軍はついに気象台の通信を探知し、グラマン機の激しい攻撃を受けた防空壕は落盤した。福岡管区気象台に訣別電報を打った後、小禄壕を後にして南の方へ移動を始めた。長堂部落に近い饒波(のは)では、首里から南下して来た職員の一部と合流した。長堂でも戦死者と負傷者数名を出し、ここも危なくなったので更に後退せざるを得なくなり、5月22日、長堂をあとにして真栄平に向かった。2名の職員が、負傷して動けなくなった職員を見るために残ったが、追撃砲弾が激しくなり、ついに2名は、やむなく、負傷して動けない職員に手榴弾を手渡して、真栄平へ出発した。(中略)
 真栄平では、1名が餓死したが、負傷してその場に残った1名と、真栄平から名城方面へ別れ、その後糸満で捕虜となった2名が生き残った。他の職員19名は米須を経て伊原にたどり着いた。6月中旬に2名が負傷し(1名はその後自決)、6月22日には若い職員2名が爆死した。
 残った職員のうち13名は伊原の地を離れたようである。
負傷して動けなかった職員1名はここで捕虜となり、そして生き残った。
出典「気象庁『気象百五十年史』より」
晴れやすい「梅雨明け10日」 今年は「10日以上」
 今年の6月23日(月)の慰霊の日の天気は、県内各地で朝から晴れて、日中の気温は33℃前後と厳しい暑さが予想されます。各地の追悼式に参加される方は、日傘や帽子で日陰を作り、こまめな水分補給と時間を決めて休憩をするなど、周囲の方が気を配りながら熱中症への対策をお願いします。

紫外線対策 ※ウェザーマップ
沖縄本島地方・大東島地方の予報 ※6月20日(金)午前11時、ウェザーマップ発表
宮古島地方・八重山地方の予報 ※6月20日(金)午前11時、ウェザーマップ発表

 例年は梅雨明け(平年は6月21日ごろ)から10日間前後は「梅雨明け10日」と言って、太平洋高気圧に覆われて安定して晴れる日が多くなり、台風の影響が少ない時期でもあります。
 ただ、今年の沖縄地方は、6月8日(日)の梅雨明けの発表(速報値)以降、安定して晴れやすい気圧配置が続いています。この先の7月6日(日)にかけての各地の天気と気温の予想を見てみますと、大きな天気の崩れはなく晴れて暑さが続く予想です。

那覇の7月6日(日)にかけての天気と気温予想 ※6月20日(金)午前11時、ウェザーマップ発表
宮古島の7月6日(日)にかけての天気と気温予想 ※6月20日(金)午前11時、ウェザーマップ発表
石垣島の7月6日(日)にかけての天気と気温予想 ※6月20日(金)午前11時、ウェザーマップ発表
南大東島の7月6日(日)にかけての天気と気温予想 ※6月20日(金)午前11時、ウェザーマップ発表

 今年は「梅雨明け10日以上」晴天が続くというのが特徴です。お出かけ日和も続きますが、危険な暑さが予想される熱中症警戒アラートが連日、各地域に発表されています。
 熱中症警戒アラートは、熱中症の危険性に対する「気づき」を促すことを目的として気象庁と環境省が共同で発表する情報です。アラートが発表されている日は、適切な冷房の使用のほか、散歩や外での運動は暑い時間帯を避けるなど、より熱中症への対策が必要です。

熱中症になりやすい時 ※ウェザーマップ
熱中症予防のポイント ※ウェザーマップ

 
 また、6月20日(金)午前0時時点での沖縄本島の合計11ダムの貯水率は91%で平年値との差はマイナス1ポイントとなっています。先週からの貯水率に大きな変化は見られないものの、しばらくまとまった雨は予想されていないため、引き続き水を大切に使用していきましょう。

21日は夏至 正午ごろ影をチェック
 沖縄地方は、今週末にかけても太平洋高気圧の圏内で晴れる時間が長くなりそうです。6月21日(土)は夏至です。1年で最も昼の時間が長く、太陽の高さが最も高くなる日です。
 太陽が真上にある正午ごろは、沖縄では影が短くなる現象が見られます。暑さには十分に気をつけて観察してみるのも沖縄ならではの夏至の楽しみ方です。
25日前後は高い潮位に
 気象庁から、6月20日(金)に大潮による高い潮位に関する全般潮位情報が発表されました。25日(水)の新月の前後は大潮の時期に当たり、満潮の時間帯を中心に潮位が高くなります。西日本と沖縄地方の沿岸の一部では、海岸や河口付近の低い土地で浸水や冠水の恐れがあり、石垣島地方では暖水渦の影響で潮位が平常より15センチ程度高い状態となっています。
 23日から30日にかけて、満潮の時間帯を中心に海岸や河口付近の低い土地で浸水や冠水の恐れがあり、注意が必要です。

崎濱綾子
気象予報士/防災士(株式会社ウェザーマップ)
 沖縄県宜野湾市生まれ。ミスはごろもとして地元の観光大使を務める。RBC琉球放送でラジオ・テレビのリポーター、QAB琉球朝日放送で気象キャスターを担当。
2005年に沖縄初の女性気象予報士となる。2005~2016年3月までRBC琉球放送の夕方のニュース番組で月~金曜日の気象キャスターを担当。2016年4月から東京の本社で勤務。Yahoo!ニュース動画出演・記事執筆を担当。Yahoo!ニュースエキスパート。好きな天気現象は、夏至南風(カーチーベー)。
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沖縄気象台職員も戦争の犠牲になった80年前 今年の慰霊の日は33℃の予想 厳しい暑さに注意
琉風之碑=2024年6月23日、糸満市伊原 ※筆者撮影">
沖縄気象台職員も戦争の犠牲になった80年前 今年の慰霊の日は33℃の予想 厳しい暑さに注意
琉風之碑での慰霊祭に参加した弊社の森田正光=2024年6月23日、糸満市伊原 ※筆者撮影">
沖縄気象台職員も戦争の犠牲になった80年前 今年の慰霊の日は33℃の予想 厳しい暑さに注意
㊧1945年5月25日天気図㊨1945年5月26日天気図 (気象庁提供)">
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紫外線対策 ※ウェザーマップ">
沖縄気象台職員も戦争の犠牲になった80年前 今年の慰霊の日は33℃の予想 厳しい暑さに注意
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沖縄気象台職員も戦争の犠牲になった80年前 今年の慰霊の日は33℃の予想 厳しい暑さに注意
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沖縄気象台職員も戦争の犠牲になった80年前 今年の慰霊の日は33℃の予想 厳しい暑さに注意
熱中症になりやすい時 ※ウェザーマップ">
沖縄気象台職員も戦争の犠牲になった80年前 今年の慰霊の日は33℃の予想 厳しい暑さに注意
熱中症予防のポイント ※ウェザーマップ">
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