米国が参戦すれば衝突の激化、大規模化は避けられない。米国は軍事介入を自制すべきだ。

 イスラエルとイランの交戦を巡り、トランプ米大統領が、イラン攻撃に踏み切るかどうか「2週間以内に決める」と表明した。
 イスラエルがイランの核関連施設などへの空爆を始めて20日で1週間。中東情勢は緊張が高まっている。
 米国がイスラエルの求めに応じて軍事介入に踏み切るかどうか。
 イラン中部フォルドゥの地下深くには核開発の要となるウランの濃縮施設があるとされる。イスラエルは地下の軍事施設を破壊する特殊な爆弾「バンカーバスター」の使用を米国に求めたとみられている。
 すでに米国内から欧州へ空中給油機数十機が移動し、空母もイラン周辺に向かった。
 イランの最高指導者ハメネイ師は、米国が攻撃に踏み切った場合、中東の米軍駐留基地に報復攻撃する方針を決定した。
 米軍が介入すれば湾岸諸国にも紛争が広がりかねない。
 かつて米国が主導したイラク戦争は終結まで8年を費やした。攻撃の根拠とされた大量破壊兵器は見つからず、国際社会から批判を浴びたことを忘れたのか。
 イスラエルのネタニヤフ首相は今回、イランが「短期間」で核兵器を保有できる段階にあると主張し、攻撃を正当化した。

 ただ、IAEAは「証拠はない」としている。
 一方的な制裁に正当性は見当たらず、米国は加担すべきではない。
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 両国は20日も空爆の応酬を続けている。
 イスラエルの攻撃は核関連施設だけでなく軍事施設やテレビ局にも及んだ。イランも都市部を狙い断続的に攻撃している。
 そうした中で犠牲者も増え続けている。
 イスラエル政府は19日午前までに24人が死亡し、838人がけがをしたと発表。イラン当局によると16日までに224人が死亡し、少なくとも1800人が負傷した。
 暴力はさらなる暴力を呼ぶだけだ。
 紛争が拡大すればイランが、原油の海上輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖に踏み切る可能性もある。そうなれば国際経済への影響も避けられない。
 国際社会は軍事衝突の拡大を防ぐため、対話の道を探るべきだ。

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 中東から原油を買う日本にとってもこの地域の安定は重要な意味を持つ。
 国連憲章は、国際関係における武力による威嚇や武力の行使を原則として禁止している。「法の支配」の観点からもこれ以上の衝突拡大は許されない。
 石破茂首相は、イスラエルによるイラン攻撃を受けて「到底許容できない」と非難した。
 その姿勢を変えることなく、日本も外交を通じて緊張緩和を働きかけるべきだ。
 国際社会の一員として紛争の拡大を防ぐ努力が求められる。
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