[鉄の暴風吹かせない 戦後80年]
 沖縄県民の4人に1人が命を落としたとされる沖縄戦から80年を迎えた「慰霊の日」。県内各地で慰霊祭が執り行われ、遺族だけでなく平和について考えようと県内外から多くの人が参列した。
照りつける日差しの下、戦没者の冥福を祈りながら、不戦の誓いを新たにした。

「次も来れるかね。苦しいね」と涙ぐみ、礎に刻まれた名前をなぞる女性=23日午前10時31分、糸満市摩文仁・平和祈念公園(喜屋武綾菜撮影)
戦没者の冥福を祈り、一般焼香する人たち=23日午後1時43分、糸満市摩文仁・平和祈念公園(喜屋武綾菜撮影)
「平和の火」を照らす朝日を眺める人たち=23日午前5時56分、糸満市摩文仁・平和祈念公園(小宮健撮影)

白梅之塔
糸満市真栄里 約120人

手を合わせる白梅之塔の遺族代表ら=23日、糸満市真栄里・白梅之塔

 山城芳子さん(97)=糸満市 県立第二高等女学校3年の時に母を残して宮崎に疎開した。友達とも離ればなれ。今日は娘にメークをしてもらい同窓生たちに手を合わせに来た。元気に慰霊祭に来られてありがたい。悲惨な戦争は二度と起こしてはならない。
ひめゆりの塔
糸満市伊原 約250人

歌を斉唱する遺族ら=23日午前、糸満市伊原・ひめゆりの塔

 玉代勢幸雄さん(77)=浦添市 伯父の秀文はひめゆり学徒を引率し戦死した。面識はないが親戚に話を聞くなどし、悲劇を風化させまいと40年ほど式典への参列を続けている。自民党の西田昌司参院議員の発言は事実誤認で、遺族として憤りを覚える。
ずゐせんの塔
糸満市米須 自由参拝

戦没者追悼に訪れた参加者ら=23日、糸満市米須・ずゐせんの塔

 新元貞子さん(99)=那覇市 昨年解散した瑞泉同窓会の会長を務めた。高校卒業後は上京し、地上戦は経験していない。
生存者から体験談を聞く度に罪悪感を感じた。青春と命を奪われた後輩を思うと胸が痛い。二度と戦争を起こさないよう沖縄戦を語り継ぎたい。
南燈慰霊之塔
名護市大西 約250人

南燈慰霊之塔に手を合わせる参列者=23日、名護高校敷地内の同碑

 知花千恵子さん(84)=那覇市 兄(真喜屋実昭(さねあき)さん)を亡くした。8人きょうだいの次男で優しい人だったと聞いているが仏壇の写真を見てどんな兄だったかを聞くと気丈夫な母が涙を流しそれ以来聞けなかった。二度と戦争が来ませんようにとヒヌカンにお祈りしている。
沖縄師範健児之塔
糸満市摩文仁 約100人

犠牲者へ祈りをささげる参拝者=23日、糸満市・沖縄師範健児之塔

 濱崎清昌さん(96)=北谷町 当時は沖縄師範学校予科2年で鉄血勤皇隊に所属。摩文仁で6月19日に突然解散命令が出され、その後4人一組で壕を出た。3人は戦死した。戦争は始まれば止められない。亡くなった友人や先生方には安らかに眠ってほしい。
梯梧之塔
糸満市米須 自由参拝

孫の瑠人くん(9)とともに手を合わせる山城武男さん=23日、糸満市米須

 山城武男さん(82)=那覇市 曽祖父が沖縄昭和高等女学校の設立関係者だった。
今年は3人の孫も初めて連れてきた。当時はひもじくて仕方がなかった。戦時中の自分と同年代の孫たちにはこんな思いをしてほしくないからこそ、一緒に平和について考えたい。
積徳高女追悼法要
那覇市松山 12人

積徳高等女学校戦没者追悼法要で手を合わせる参列者=23日午前11時42分、那覇市松山・大典寺

 知念栄仁さん(71)=八重瀬町 叔母が亡くなったので毎年来ている。今年は孫も連れて家族7人で来た。アメリカによるイランへの攻撃も起こっている。もう一人の叔母もひめゆり学徒隊で亡くなった。孫たちにも平和は大切だよと伝えていきたい。
一中健児之塔
那覇市首里金城町 約730人

一中健児之塔に手を合わせる参列者=23日、那覇市首里金城町

 山田芳男さん(94)=沖縄市 当時、県立一中の1年生だった。戦争が激しくなると、首里から島尻に逃げた。最終的に捕虜となったが、親代わりに育ててくれた大叔母を亡くした。戦争は本当にむごいもの。
後輩には「戦争には加担しないように」と伝えたい。
二中健児の塔
那覇市楚辺 約160人

二中健児の塔に手を合わせる参列者=23日午前10時半、那覇市楚辺

 冨里千津子さん(91)=那覇市 沖縄戦当時、二中の2年生だった兄上江洲盛文の名前が塔に刻まれている。とても頭が良い兄だった。「慰霊の日」はいつも胸の詰まる思いがする。戦後80年がたった。いつも戦争がなく、平和な世界であるように祈っている。
開南健児之塔
糸満市山城 約110人

戦没者に焼香する遺族ら=23日、糸満市山城の開南健児の塔

 崎間貴子さん(49)=那覇市 戦死した伯父は旧開南中の8期生だった。写真もなければ、どこで亡くなったのかも分からない。糸満市のガマの中から見つかった骨片が伯父のものだったらと思い、DNA鑑定を申し出た。せめて遺骨だけでも探し出してあげたい。
海鳴りの像
那覇市若狭 約100人

戦時遭難船舶犠牲者のみ霊に祈りをささげる参列者=23日、那覇市若狭、海鳴りの像

 
 比嘉君子さん(87)=名護市 姉は本土の軍需工場で働くため「湖南丸」に乗って亡くなり、その沈没は軍の機密扱いで戦後ようやく分かった。80年以上たっても船は海底のまま。
お墓には貝殻が納められている。慰霊祭では平和がいつまでも続くことを祈っている。
那覇商高和魂の塔
那覇市松山 約70人

沖縄戦の戦没者に手を合わせる関係者=那覇市松山の那覇商業高校

 浦崎康伸さん(88)=那覇市 二つ上の兄が通信隊として学徒動員された。6月23日に摩文仁で死んだと聞いているが、遺骨もなく正確なことは分からない。沖縄戦で亡くなった親族がいるということを子どもたちに伝えていく。それが平和を守っていく唯一の道だ。
沖縄工業健児之塔
糸満市摩文仁 自由参拝

沖縄工業健児之塔で祈りを捧げる参拝者ら=23日、平和祈念公園

 石川滿さん(75)=うるま市 沖縄工業高校の建築科だった叔父は当時19歳で婚約者がいた。卒業証書ももらっていたが通信隊要員として最期を遂げた。亡くなった場所も分からず遺骨収集もできていない。遺族会役員は引退したが、平和への思いを伝えていかねば。
島守の塔
糸満市摩文仁 約50人

島守の塔で黙祷をする出席者

 仲村勇さん(89)=那覇市 空襲から逃れ首里から今帰仁の呉我山に向かって家族4人で歩いた。昼は草むらに身を隠し夜に動いた。
空腹でカエルを食べ飢えをしのぎ名護で捕虜になった。いつ死ぬか分からない恐怖を経験した。戦争の悲惨さを次世代に伝えていきたい。
南洋群島慰霊碑
那覇市識名 自由参拝

戦没者に祈りをささげる遺族ら=23日、那覇市識名・南洋群島慰霊碑

 平良幸一さん(91)=那覇市 小禄国民学校1年生の夏にサイパンへ渡った。戦争が始まり、家族と山に逃げたが、避難していた一軒家に爆弾が直撃、両親と兄を亡くした。体験者も亡くなったり高齢化したりしており、南洋での慰霊祭も若い人が受け継いでほしい。
いつ死ぬのか分からなかった

早朝の光を浴びながら魂魄の塔に手を合わせる男性=23日午前7時22分、糸満市米須(宮城貴浩撮影)
ひめゆりの塔の慰霊祭で涙を流しながら手を合わせる島袋淑子さん=23日午前11時22分、糸満市伊原

二度と戦が来ませんように

壕の中で手を合わせ、戦没者の冥福を祈る子どもたち=23日午後9時32分、糸満市摩文仁・沖縄師範健児之塔(金城拓撮影)
沖縄戦の犠牲になった家族について孫に話して聞かせる女性=23日午後4時18分、糸満市摩文仁・平和祈念公園
魂魄の塔に花を供える子ども=23日午前9時36分、糸満市米須(宮城貴浩撮影)
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「次も来れるかね。苦しいね」と涙ぐみ、礎に刻まれた名前をなぞる女性=23日午前10時31分、糸満市摩文仁・平和祈念公園(喜屋武綾菜撮影)">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
戦没者の冥福を祈り、一般焼香する人たち=23日午後1時43分、糸満市摩文仁・平和祈念公園(喜屋武綾菜撮影)">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
「平和の火」を照らす朝日を眺める人たち=23日午前5時56分、糸満市摩文仁・平和祈念公園(小宮健撮影)">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
手を合わせる白梅之塔の遺族代表ら=23日、糸満市真栄里・白梅之塔">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
歌を斉唱する遺族ら=23日午前、糸満市伊原・ひめゆりの塔">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
戦没者追悼に訪れた参加者ら=23日、糸満市米須・ずゐせんの塔">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
南燈慰霊之塔に手を合わせる参列者=23日、名護高校敷地内の同碑">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
犠牲者へ祈りをささげる参拝者=23日、糸満市・沖縄師範健児之塔">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
孫の瑠人くん(9)とともに手を合わせる山城武男さん=23日、糸満市米須">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
積徳高等女学校戦没者追悼法要で手を合わせる参列者=23日午前11時42分、那覇市松山・大典寺">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
一中健児之塔に手を合わせる参列者=23日、那覇市首里金城町">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
二中健児の塔に手を合わせる参列者=23日午前10時半、那覇市楚辺">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
戦没者に焼香する遺族ら=23日、糸満市山城の開南健児の塔">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
戦時遭難船舶犠牲者のみ霊に祈りをささげる参列者=23日、那覇市若狭、海鳴りの像">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
沖縄戦の戦没者に手を合わせる関係者=那覇市松山の那覇商業高校">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
沖縄工業健児之塔で祈りを捧げる参拝者ら=23日、平和祈念公園">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
島守の塔で黙祷をする出席者">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
戦没者に祈りをささげる遺族ら=23日、那覇市識名・南洋群島慰霊碑">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
早朝の光を浴びながら魂魄の塔に手を合わせる男性=23日午前7時22分、糸満市米須(宮城貴浩撮影)">
忘れない、祈り今こそ 沖縄県内各地で慰霊祭 孫に同じ思いさせたくない
ひめゆりの塔の慰霊祭で涙を流しながら手を合わせる島袋淑子さん=23日午前11時22分、糸満市伊原">
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