石垣市の公文書日付改ざんや虚偽答弁を巡り、市議会が、地方自治法100条に基づく特別委員会(百条委)の設置を求める議案を、与党と一部中立の反対多数で否決した。
市議会では、市が専決処分した国民健康保険事業の特別会計補正予算の承認を求める議案の改ざんが判明。つじつま合わせで担当課長がうその答弁をしていたことも明らかになっている。
百条委は自治体の事務に関する疑惑や不祥事を調査するため設置される。本来なら不信任決議の前に提案すべきだった。
それにしても不可解なのは、問題を巡り中山義隆市長に対して出された不信任決議に賛成した与党が、今回は反対に回ったことだ。
決議では一連の問題を「議会と市民を欺く悪質極まりない行為」とし「4期16年の長期市政による弊害」と市長の責任を厳しく問うた。
それに賛成しながら、百条委設置に反対するとは一体どういうことなのか。
百条委が否決された同日、中山市長は「自動失職」を選ぶと表明した。次の市長選で当選すれば新たに4年の任期を得る。
与党と市長が結託して不信任決議を利用し、市長の「出直し選挙」を演出した疑惑がますます膨らんでいる。
不信任に賛成し、百条委に反対した全ての議員には、その理由について納得できる説明が求められる。
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百条委設置を巡り、反対討論に立ったのは中立会派の議員1人だった。
問題が刑事告発されたことを理由に「捜査に支障があるとして市側は満足な答弁ができないのではないか」と疑問視。百条委の役割が果たせないとして反対したのだ。
これに市の総務部長も同調。議員に百条委が設置された場合の対応を問われ「刑事事件として警察が捜査している案件であり、職員は黙秘権を行使できる」と答弁した。
しかし、首長と議会議員をともに住民が直接選挙で選ぶ「二元代表制」をとる地方自治体では、議会に行政のチェック機能を果たす役割が求められている。
刑事告発を理由に百条委の設置を否定するような言い方は、議会の責任逃れとのそしりを免れない。
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日付が書き換えられたのは国保事業の赤字を補填(ほてん)する公文書で、改ざんは地方自治法にも反する。市民や市財政へどのような影響があるのか。
そもそもなぜ改ざんされたのか。改ざんされた文書に市長ほか幹部ら16人の押印があったとなれば、十分な説明が求められる。議会の役割を放棄することは許されない。
不信任決議に賛成する前に、密室で与党と市長との間でどのような話し合いが持たれたのかも明かされていない。
それぞれが市民へつまびらかにすべきだ。