サービスを提供する事業所がゼロの自治体が、2024年末時点で、沖縄を含む32都道府県107町村に上ることが共同通信の調べで分かった。
沖縄はゼロ自治体が10町村と、北海道に次いで2番目に多かった。
物価高騰で事業所経営が苦しくなったことに加え、24年4月から訪問介護報酬が引き下げられ、人手不足が加速したことも影響したとみられる。
訪問介護は、住宅をホームヘルパーや介護福祉士が訪問し日常生活を支援する介護保険サービスだ。入浴や食事、排泄などを介助する「身体介護」のほか、「生活援助」「通院介助」がある。
原則、40歳以上の国民は介護保険料を支払っている。にもかかわらず、住んでいる地域によって希望するサービスが利用できないのは不公平だ。
特に訪問介護は、高齢者が住み慣れた「わが家」で暮らすための大切なサービスの一つ。1人暮らしや高齢夫婦世帯などを支えるためにも必要な制度である。
家族にとっても、高齢の親を自宅でケアしてもらえる事業所がなくなれば、不安や負担が増し、介護離職が増える可能性もある。
社会経済活動の後退にもつながりかねない。
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深刻なのは、人口減少や高齢化が進む中山間地や離島自治体での「介護空白」である。
県内で訪問介護事業所がゼロなのは、渡嘉敷や座間味、南大東など2町8村。
離島の場合、近隣自治体と連携し介護サービスを提供し合うこともできない。各自治体が工夫しながらやりくりしている状況だ。
本島でも、25年4月時点で訪問介護事業所が1カ所しかないのは4町村、2カ所は3村。地域格差がさらに拡大する恐れもある。
国は、住み慣れた地域で自分らしく暮らしながら医療や介護も受けられる「地域包括ケアシステム」を推進しているが、足元に迫っているのは「自宅で暮らせなくなるかもしれない」という不安である。
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35年には団塊世代が85歳以上となり、介護サービス需要が高まるのは必至だ。
介護保険制度は「介護の社会化」を掲げて導入されたが、少子高齢化が進む中で自治体や家族に負担を強いながら、何とか成り立っているのが現状である。
昨年の介護報酬改定後、関係者は「訪問介護の終わりの始まり」と危機感を訴えた。公的財源を投入し、事業所や介護従事者を支えることが不可欠だ。
とりわけ過疎地域の人材確保に務め、高齢者が安心して暮らせる環境を整えることが求められる。