信頼していた先生による盗撮は、子どもたちにどれほどの衝撃と恐怖を与えたことか。画像や動画を教員同士で共有するという前代未聞の卑劣な事件である。

 女子児童を盗撮し交流サイト(SNS)のグループチャットで共有したとして、名古屋市と横浜市の小学校教員の男2人が、性的姿態撮影処罰法違反の疑いで逮捕された。
 2人はそれぞれ愛知県内、神奈川県内の施設で児童の下着を盗撮し、共有していた疑いが持たれている。
 校内や学校行事で撮影されたとみられる約70点の写真や動画が共有され、中には女子児童の着替えの様子を撮影したものもあった。児童の顔に別人の体を合成した性的な「ディープフェイク」の画像も。チャットには、画像や動画を称賛し合う投稿をしていたという。
 言葉を失うのは、このチャットに小中学校の教員とみられる約10人が参加していたことだ。
 逮捕された教員の1人は、授業や学校行事などで児童を日常的に撮影する役割を担っており、撮影に学校のデジタルカメラが使われていたという。
 広く社会から尊敬され、子どもたちから信頼される教師という立場を悪用した言語道断の犯罪だ。
 盗撮されたデータが拡散されていないか、同種事例があるのではないか、グループに加わっていた教員は他にいないか。厳正な対処と確認を求めたい。
■    ■
 教師の逮捕に加え、被害に遭ったかもしれないとの不安など、子どもたちへの影響が心配される。
 保護者説明会では、隠しカメラがあるのではないかと危惧する声や、児童の着替えが安全にできないとの意見が出たという。

 スクールカウンセラーによる面談など、心のケアが必要である。 
 盗撮などの性暴力は、生涯にわたり被害者の心に深い傷を残す。いかなる理由があっても許さないという認識を社会で共有し、未然防止にあらゆる手を尽くしたい。
 子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を雇用主側が確認する「日本版DBS」が、「こども性暴力防止法」に基づき2026年度に始まる。
 ベビーシッターによるわいせつ行為や学習塾での盗撮などが相次ぎ、保護者らが創設を求めていた。
 法律をより実効性のあるものにするためにも、今回の盗撮事件も踏まえ、課題を洗い出し対策を講じるべきだ。
■    ■
 20歳未満が被害者となる性犯罪は22年、2776件だった。
 内閣府が同年行った性暴力被害者約2千人を対象にした調査では、加害者で最も多かったのが教職員や先輩、クラブ指導者など「学校・大学の関係者」である。
 子どもへの性犯罪は他の性犯罪に比べ発覚しづらく、反復性が高い。
 極めて深刻な事件だ。子どもを守る対策の強化が求められる。
編集部おすすめ