沖縄国税事務所は、相続税や贈与税の算定基準となる県内路線価(2025年1月1日現在)を発表した。路線価の算出基準となる標準宅地の平均上昇率は6・3%。全国平均の2・7%を大きく上回った。都道府県別では東京都(8・1%)に次いで全国2番目に高かった。
県内6税務署管内の最高路線価は全て上昇。観光需要の増加と堅調な住宅需要を見込み、沖縄の不動産市場への投資が活発化している。市街地から離れても海辺に近い場所など人気が高く、まんべんなく地価が高いのも特徴だ。
変動率が最も高かったのは、ホテルの進出を機に開発が一気に進んだ宮古島だ。リゾート地域だけでなく、地域全体の住宅地、商業地も急騰し「平良字西里、西里大通り」で、18・5%上昇した。
テーマパーク「ジャングリア沖縄」の開業を前に、名護市では「字為又、名護バイパス」が、過去最大8・1%の上昇となった。
沖縄の場合、本島中南部の宅地に適した土地に米軍基地が横たわっていることも高止まりの構造的要因であることは指摘しておきたい。
全国最低の県民所得の水準に比べ割高感があるのは否めない。
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県内では賃貸物件で暮らす人が多い。地価の上昇に伴う、固定資産税の増額で家賃を上げざるを得ないオーナー側の意向や建築資材の高騰も重なり、全域で家賃の上昇の勢いが強まっている。
テーマパーク開業を控えた本島北部では、従業員用の住居確保などで需給が逼迫(ひっぱく)、名桜大学生がアパートを探せなくなる事態も起きた。
家賃上昇の影響を受けやすいのは、学生のほか、ひとり親世帯や収入の少ない高齢者らだ。暮らしへの影響を注視しなければならない。
県内の路線価格上昇は11年連続だ。観光需要に引っ張られ、さらに上昇が続けば、マイホームはますます手の届かないものになってしまう。
都市部だけでなく、離島の一部でも、一戸建て住宅を買うことは難しくなっているという。
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沖縄は持ち家率が42・6%(2023年)と全国の60・9%に比べて大きな差があり、全国で1番低い。しかも、その差は年々、広がる傾向にある。
このままでは、県内でも土地や住宅を持つ人と、持たない人との格差が広がってしまうのではないか。
賃金の上昇をはるかに超える家賃や不動産価格の高騰は、県民生活を圧迫する。
物価高を背景に、経済政策が大きな争点となっている参議院選挙だが、沖縄で進む住まいの格差問題も、議論すべきテーマである。