今回の参院選は、昨年の衆院選で石破茂政権が「少数与党」になってから初めての国政選挙である。
 与野党双方から「事実上の政権選択選挙」との声が上がっている。

 参院選が事実上の政権選択選挙とは、どういう意味なのか。
 昨年の衆院選で自民、公明の与党は過半数を大きく割り込んだ。首相指名で野党が割れたため政権交代は実現せず、「石破少数与党」政権が誕生した。
 野党の協力がなければ予算も法案も成立しないという政治状況が生まれたのである。
 自民、公明両党が今度の参院選で50議席を獲得すれば、非改選議席を含め過半数に達する。
 石破政権はこの数字を勝敗ラインに設定した。
 党内に「必達目標」が低過ぎるとの批判があり、50議席に達したとしても、結果次第では、何が起きるか分からない。
 50議席に届かなければ、衆院に加え参院でも「少数与党」に転落する。
 野党が政権交代を実現するため一致団結すれば、石破政権は立ちゆかなくなり、党内外から退陣を求める声が高まるのは確実だ。
 ただ事実上の政権選択といいながら、参院選後の政権像は語られていない。
 成り行きまかせではなく、参院選後の政権像を有権者に示すべきではないのか。
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 沖縄選挙区にとって政権選択選挙は、どういう意味を持つのだろうか。

 例えば、辺野古の新基地建設問題。民主党が政権を取っても計画を覆すことはできなかった。
 有権者の中に、どの政権になっても変わらないという諦めがまん延しているのは確かだ。
 だが、1996年の普天間返還合意以降の動きを「虫の目」で見ていくと、政権によって取り組みや対応に違いがあることに気付く。
 橋本龍太郎首相は対話を重視し、小渕恵三首相もその路線を踏襲した。政府と県の対立がピークに達したのは安倍政権の時だ。
 同じ自民党政権であっても、それぞれの時代が抱える課題が異なることもあって、沖縄に対する対応は決して同じではなかった。
 政権交代があるかないかは、沖縄が抱える諸問題に大きな影響を与える。
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 石破首相の少数与党下の政権運営については、自民党内からも「指導力が感じられない」などの批判がある。
 都議選での大敗をはね返し、参院選でどのように「必達目標」の過半数を獲得するか。
 一方、野党は政権交代を実現する空気をどうやってつくりだすか。
 政権選択を巡るこの混迷こそ、危機的と言うべきかもしれない。

 有権者の選択が日本の未来を決めるという、議会制民主主義の基本をもう一度かみしめたい。
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