参院選では物価高対策が最大の争点だ。
自民、公明の与党は国民1人2万円、子どもと低所得世帯には1人2万円を上乗せする現金給付を公約とする。
対する野党は消費税の減税や廃止を主張する。
立憲民主は最長2年間の食品0%、維新も2年間0%を打ち出した。国民民主は実質賃金がプラスになるまで一律5%引き下げ、共産も一律5%引き下げだが将来的に廃止するという。参政は段階的廃止としており、れいわは即時廃止を訴えている。
消費税は物価高に連動して「自動増税」となる。低所得層ほど影響を受ける食品の税率引き下げは一定理にかなっている。
一方、消費税収の大半は年金・医療などの社会保障に使われる。減税分をどう補填(ほてん)するのか。各党から十分な方策が示されているとは言い難い。
自公の給付金は即効性という点では支援につながりやすい。
ただ、過去の現金給付は多くが貯蓄に回された。
給付金、消費税減税とも高所得層が有利とされており、「ばらまき」と言われても仕方がない。
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県内は物価高の影響を最も受けている地域の一つだ。
背景にはそもそもの県民所得の低さがある。そこに折からの物価高が追い打ちをかけ、物価上昇を加味した実質賃金はマイナスが続く。
特にひとり親世帯をはじめとする低所得層の負担感は重い。「子どもにおなかいっぱい食べさせたい」との悲痛な声も上がる。
1人当たり県民所得の引き上げや、貧困対策など必要としている人に効果的に支援を届ける仕組みが求められる。
高齢者も「物価高に年金が追い付いていない」と吐露する。4月からの支給額は物価上昇に伴い3年連続で引き上げられたものの、将来の給付水準を確保するため、物価や賃金の伸びよりも低く抑える措置がとられた。
少子高齢化が進む中、持続可能な社会保障の在り方の議論も欠かせないだろう。
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税の不公平も放置されてきた。ここ10年余で消費税が2度引き上げられた半面、法人税は減税。それなのに期待ほど投資や賃金は増えず、企業の内部留保と株主還元へ回っている。
物価高は今後も続くとみられている。目先の施策を訴えるだけでは、国民の不安は拭えない。
格差是正など暮らしの安心をベースにしつつ、中長期的な視野で物価高に負けない社会と強い経済をつくる論戦こそが求められる。