【八重瀬】八重瀬町屋宜原の弁当屋「パーラーとまと」は「ばーば」と孫がタッグを組む。水を飲む暇もない大わらわの厨房(ちゅうぼう)で店主の新城康子さん(84)と孫の虹南(こなん)さん(22)がこんろを分け合う。
十数年ぶりに訪れたお客さんに「こんなに大きくなって…」と感激されるのもそのはず。店は幼い頃から虹南さんの遊び場だった。(南部報道部・平島夏実)

タッグを組む新城康子さん(左)と虹南さん。店ができて数カ月後に虹南さんが生まれたという=6月17日、八重瀬町屋宜原の「パーラーとまと」

 康子さんと虹南さんがキャベツの葉をかぶって遊ぶ写真が残っている。虹南さんはちゃんぷるー用の麩(ふ)をちぎって床中にばらまいたこともあり、康子さんは「どんどん注文が入るから片付ける暇もない。足でよけながら歩きましたよ」と笑う。
 中学生になった虹南さんは時々店に出て、アルミカップを折り箱にセットする作業で日払いの小遣いをもらった。
 店の弁当は部活仲間にも人気で「自分も実家のちゃんぷるーはおいしいなって思ってました。こう言ったらてんぐなんですけど」。
 おととし、本格的に康子さんに弟子入りした。

キャベツの葉をかぶって遊ぶ新城康子さん(右)と1歳半の虹南さん(提供)

 調味料の具合は繰り返し味見してもらい、目分量で覚えた。五つのこんろは基本的に「康子さん二つ、虹南さん三つ」で分けるが、虹南さんが全てを使い「ナスみそ」や「ちゃんぽん」を一気に作る日もあるという。

 アクシデントは絶えない。顆粒(かりゅう)のだしのふたが開いてフライパンの中が真っ白になったり、しょうゆと思い込んでウスターソースを加えたり。鍋がぬれている状態で油を入れると水気が盛大にはねるが、「そういう時は野菜で押さえる技があります。本当に忙しいので」と虹南さんはおどける。
 康子さんに「…お前!」と呼ばれたら忙しい証拠だ。追い込まれると虹南さんの名前がとっさに出てこなくなるらしい。
 康子さんの癖もお客さんの顔も覚えた虹南さんだが、太刀打ちできないものがある。店の名物のサーターアンダギーだ。販売歴30年以上の康子さんは指の間から生地を6個分、器用に鍋へ落とす。虹南さんの手は二回り大きいが、3個分落とすのが限界だという。
 「ばーばには、やっぱりまだまだです」
 店の営業は平日のみで午前8時~午後1時。問い合わせはパーラーとまと、電話098(998)0093。

写真を拡大 (地図)パーラーとまと
祖母の人気弁当店に孫が弟子入り サーターアンダギー作り「やっ...の画像はこちら >>
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祖母の人気弁当店に孫が弟子入り サーターアンダギー作り「やっぱりまだまだ」 沖縄・八重瀬町「パーラーとまと」
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