県内八つの平和関連施設でつくる「沖縄・平和と人権博物館ネットワーク」がシンポジウムを開いた。
ネットワークは今年2月に設立された。8施設が初めて一堂に会し、次世代への継承をテーマに課題を共有した意義は大きい。
「対馬丸記念館」は対馬丸以外に撃沈された30隻についての企画展の取り組みを説明した。「ひめゆり平和祈念資料館」が全21の学徒隊を紹介したことを参考にしたという。
アジア太平洋戦争では、米軍機や潜水艦の攻撃によって多くの艦船が沈没した。一方、当時はかん口令が敷かれ、今なお戦時撃沈船舶についての情報は少ない。新たに掘り起こされれば戦争の実相にさらに近づくことができるだろう。
若者に沖縄戦をどう伝えるかも重要なテーマだ。
「南風原文化センター」は小中学生らから質問を募り、それに答える形の企画展「今さら聞けない沖縄戦」を開催中だ。展示を通して子どもたちとコミュニケーションが取れたという。
ひめゆりは4年前、若者へ伝わるよう展示内容を刷新した。
シンポで改めて確認されたのは、各施設の連携が発信力の相乗効果につながっているということだ。
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沖縄戦は県内の戦後社会と地続きだ。戦争とその後の米軍統治は現在の基地問題や、今も続く不発弾処理などの問題に深く関わっている。
若い世代が今につながる歴史を自分ごととして捉えるため「ヌチドゥタカラの家」と「不屈館」が収集・展示する戦後資料や、米軍普天間飛行場の一部返還地に立地する「佐喜眞美術館」の役割は大きい。
「沖縄愛楽園交流会館」は「戦争被害は(ハンセン病など)社会から排除される人に凝縮されて表れる」と人権の観点からも捉える必要性を提起した。
戦後80年を前に県内の高校生を対象にしたアンケートでは米軍基地を容認する傾向が強まっていることが明らかになっている。
祖父母も戦後世代という家庭が増える中、沖縄戦だけでなく米軍統治下の歴史を学ぶ必要性も高まっている。
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沖縄戦の教訓を次世代につなげていくことは差し迫った課題だ。
1945年以前に生まれた「戦前生まれ」の人口は県内総人口の7・8%と推計され、初めて8%を切ったことが南西地域産業活性化センターの分析で明らかになった。
学校現場における平和教育のカリキュラム作成にネットワークを有効活用してほしい。
8施設がさらに県外の平和関連施設とも連携を深めるなど「平和と人権」の発信強化が求められる。