トランプ米大統領が、日本からの輸入品に25%の関税をかけると表明した。8月1日に発動するという。

 4月の「相互関税」の導入発表から1%分上回る水準。他方、7月9日に迫っていた相互関税の上乗せ分を猶予する期限は延長するとした。
 交渉期限を事実上延期しながら、有利な条件を引き出そうとの狙いがあるのだろう。 
 しかし米国が自国の利益だけを求めて相互関税を全面的に発動すれば世界経済は混乱する。石破茂首相に宛てた書簡で通告するというのも、あまりに一方的だ。
 米政権は4月に、大半の国・地域に一律10%の相互関税をかけた。さらに貿易赤字額に応じ相手ごとに異なる上乗せ分(日本は14%)を課したが、直後に7月9日まで90日間の停止を発表した。
 石破政権はトランプ大統領による高関税政策に対し4月以降、見直しを求め交渉を続けてきた。投資による貢献を押し出し、相互関税や自動車への追加関税の引き下げを求めてきたが、考え方の隔たりを埋められず、合意には至っていない。
 書簡の中でトランプ氏は「日本との間には大きな貿易赤字が存在する。日本の関税や貿易障壁によって生じた赤字を是正するために必要不可欠なもの」だ、と引き上げを正当化している。
 貿易赤字解消を目指す関税交渉の成果が上がらないことへの、いら立ちや焦りが透ける内容でもある。

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 4月発表の相互関税率から引き下げた国が多い中、引き上げは日本とマレーシアだけ。それだけに厳しい決定だ。
 すでに課されている自動車や鉄鋼・アルミニウムへの関税とは別に、新たな相互関税が加わることになれば、日本経済への打撃は避けられない。
 ただトランプ氏は書簡で「日本が市場を開放したり、非関税政策、貿易障壁を撤廃するならば」、関税率を変更する可能性があるとも記している。
 交渉継続の余地を残すもので、石破首相も「新たな期限に向け、国益を守りつつ双方の利益となる合意を目指す」と語る。
 日本の対米投資残高は2023年まで5年続けてトップ。大規模な雇用も生み出している。 
 日本政府はオタオタすることなく、自由貿易推進の立場から冷静に筋を通すべきだ。
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 トランプ関税への対応が、参院選の重要な論点として浮上してきたと言っていい。
 ここは強気の姿勢を示すことが選挙にプラスになるとの考えも働くだろう。しかしだからといって、選挙が終わった途端に譲歩するようなやり方は認められない。
 米国市場への依存から貿易パートナーの多角化を図ることや、内需の拡大、さらには影響を受ける中小零細企業への支援など、幅広く活発に論戦を交わしてもらいたい。
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