1944年8月22日。真っ暗な海に沈んだ784人の無垢(むく)な命。
本土に疎開すれば雪が見られるかもと、無邪気に両親に手を振った子どもたち。その子どもたちを乗せた対馬丸は、那覇の港を離れたその翌日に、米軍の潜水艦に撃沈される。
 その出来事を私は知っているつもりでいた。だが知っていたのは記号化された情報だけだと思い知る。生存者の長きにわたる沈黙の苦しさ、海に投げだされた子どもたちを見捨てて立ち去った2隻の護衛艦のなぜ。
 理不尽以外、横たわる余地のない暗い海から、子どもたちの親を呼ぶ声が聞こえてくる。
 映画は、対馬丸の甲板員で生き残った中島高男の孫の手により、毎回傷口をえぐるような痛みに耐えながら、対馬丸事件の語り部となった祖父の足跡をたどる。 
(スターシアターズ・榮慶子)
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