提供施設・区域外の訓練を強行した米軍はもちろんのこと、仲介した市民や市などの対応についても疑問が多く、不可解極まりない。
石垣市北部の伊野田漁港で、米軍嘉手納基地所属の第31救難中隊が救難訓練を強行した。
14日に米空軍C130輸送機2機が相次いで石垣空港に飛来。船を陸路で運ぶボートトレーラーなどが降ろされたことが報道で判明し、漁港での訓練計画が発覚した。
15日午前から開始された訓練では米軍の救難艇が漁港を出入りしたほか、漁港内で海に入った隊員を引き上げて応急処置を施す訓練などが行われた。
訓練について県に通告はない。地元の同意もなしに強行されたとなれば問題だ。
だが、米軍に代わって漁港の使用申請をしたのは一般市民だった。先月下旬「地元漁業者と米軍による救難訓練」との目的で、漁港内での救難艇の係留と、プレハブ設置の許可申請を市に提出したのである。
しかし初日、漁業者の姿はなかった。地元漁協には何の知らせもないという。
軍隊の訓練は危険が伴う。万が一にも事故が起きれば「ミス」では済まされない。そうした訓練利用を市民が申請するとは。驚くばかりだ。
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市の対応にも疑問符が付く。
県や防衛局に問い合わせることもなく許可しており、漁港の管理者としてあまりにずさんだ。
訓練は漁港の安全管理に関わる。加えて米軍は今回、米軍機でボートトレーラーなども持ち込んでいる。
市内の道路を使い救難艇を移動させる恐れはないのか。そうなれば住民生活への影響は避けられない。
市は許可したことについて「反省している」とし、今後、市民が米軍訓練を申請しても許可しないというが、それでは不十分だ。
申請の日程によると米軍の漁港使用は今月末までとなっている。市は許可を即刻取り消すべきだ。
同時になぜこうしたことが起きたのか。市の責任で申請した市民に聞き取り、再発防止策を講じなければならない。
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米軍は今回、防衛省にも訓練の具体的な時期や場所、内容などを明らかにしていなかったという。
日米地位協定では米軍が民間港や空港を使用する際には通告が必要とある。
ただ、詳細な内容を求めるものにはなっておらず、安全上必要な場合、事前通告はいらないとも規定されている。
結果として米軍の「やりたい放題」となっているのが実情だ。
野放図な提供施設・区域外の訓練を規制するためにも地位協定の見直しを急ぐべきだ。