基地負担が健康にも影を落としている恐れが強まった。
 有機フッ素化合物(PFAS)の一種「PFHxS」の血中濃度が高いと、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる可能性があるとの研究成果を、群星(むりぶし)沖縄臨床研修センターがまとめた。
約400人の血液検査を基にした統計分析から、動脈硬化を抑える善玉コレステロールの低下や脂質異常症との関連性が示唆された。
 PFHxSはPFOAやPFOSと同様の性質を持ち撥水(はっすい)剤や航空機用の泡消火剤などに使われてきた。
 調査は、普天間飛行場にも近い浦添市にあるクリニックの一般外来患者らを対象にPFAS12種類の血中濃度を計測。体格指数(BMI)や高血圧などとの関連性を解析すると、PFHxSの血中濃度が高い人は善玉コレステロールの数値が低くなる傾向があった。 調べた399人(平均年齢53・4歳)の血中濃度平均は血液1ミリリットル当たり7・07ナノグラム。日本では健康影響の判断指標がなく比較できる調査も少ないが、2020年度に環境省調査が示した全国80人の国内平均値0・22ナノグラムの約30倍に上った。
 米国科学アカデミーの医師向け指針はPFAS7種類の合計値が血液1ミリリットル当たり20ナノグラムを超えると、脂質異常症などのリスクが生じる恐れがあるとしている。調査では約4割が20ナノグラム以上に該当していた。
 国や県はリスクが指摘されたという事実を重く受け止めなければならない。
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 今回の調査は、特定時点(21年9月~22年4月)における調査で、PFASにさらされる前後の比較はできないことなどから、心筋梗塞や脳梗塞との因果関係の断定には至っていない。
 普天間周辺のPFAS汚染が、基地由来であることはすでに明らかになっている。また、県の調査で、米軍基地周辺の湧き水や河川からは、環境省の暫定指針値を大幅に超えるPFASの検出が相次いでいる。
三沢(青森)、横田(東京)、横須賀、厚木(神奈川)基地周辺でも高濃度のPFASが検出されている。
 同センターは、高曝露(ばくろ)地域である沖縄や東京・多摩地域などでの血液検査によるPFAS濃度を公的に把握する制度の導入を訴えている。PFOSとPFOAだけを対象とする日本の水質規制は不十分で、PFHxSを含めた規制の強化も議論されるべきだ。
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 米軍基地を提供している日本政府の責任は重い。政府はこれまで健康リスクは不明確として本格的な血液検査を実施していない。
 本来であれば、住民の健康を守るために、国が率先して取り組むべきである。
 欧米に比べて遅れているPFASの健康への影響の研究を進め、基地周辺の住民に対し、公費で血液検査を定期的に実施するなど、国には住民の不安を軽減する取り組みが求められる。
 同時に、汚染源特定と除去のため、県や自治体の基地立ち入りを進める必要がある。米軍の裁量に委ねている日米地位協定の改定が不可欠だ。
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