選挙は事実上の一騎打ちで、自民の奥間亮氏を破っての勝利だ。
市長選、県議選と負けが続くオール沖縄だが、全県を選挙区とする参院選では2013年以降負けなしの5連勝となった。
自公政権への怒りと、歴史修正主義への危機感が高良氏を国政に送り出したと言える。
最大の争点は物価高対策だ。県民は国政与党が打ち出す現金給付より、野党が主張する消費税減税を選択した。
与党への批判は、変わらぬ基地問題にも向けられた。
基地負担軽減は進まないのに、日米の軍事一体化により訓練は激化。米軍機の騒音、PFAS汚染は深刻で、米兵による性暴力事件も相次いでいる。
加えて戦後80年の「慰霊の日」の前には、自民議員から沖縄戦の史実をゆがめようとする発言も飛び出し、批判が広がった。
「三日攻防」初日に自民党県連が地元2紙に出した「あなたの怒りを託して下さい」との意見広告は、その県民の怒りの強さを映し出すものだった。
高良氏は名護市辺野古の新基地建設についても明確に反対している。当選は「国会に沖縄の声を」という有権者の思いの表れでもある。
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高良氏が子育て中の母親であるということも、無党派層や女性の取り込みにプラスに働いた。
オール沖縄は今年1月の宮古島市長選で市長ゼロとなり、崩壊に近い状態にあった。崖っぷちに立たされる中、玉城デニー知事自ら選対本部長となるなど総力戦で踏みとどまった形だ。
ただ、オール沖縄を支えてきた革新支持層は高齢化で運動量が低下。各地の島ぐるみ会議も組織力の衰えが顕著で、今後にはなお課題が残る。
今回、全国で自民、公明の両党が議席を減らした一方、躍進したのは参政や国民民主だ。県内でも自民支持層の一部、若者層が参政へ流れている。
オール沖縄の候補が勝利したとはいえ、オール沖縄が勢いを取り戻した選挙ではないことを自覚した方がいい。
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来秋には天王山である知事選が控えている。参院選の勝利はプラス材料となるものの、これから中央政界がどのように動くのか、政権の枠組みがどうなるのかにも左右される。
枠組み次第では沖縄振興や安全保障政策も影響を受けるだろう。
高良氏は当選後「平和の一議席のバトンを受け継ぐことができた」と語った。
託された民意に応え、国政に県民の声を届ける役割をしっかりと果たしてほしい。