日米関税交渉を巡り、日米両政府は、米国が日本に課す「相互関税」を15%で合意したと明らかにした。
ことし4月から始まった交渉は難航。トランプ大統領は今月、石破茂首相に宛てた書簡で日本からの輸入品に25%の関税をかけると通告していた。
8月1日の発動を前にした急転直下の合意は、一定の引き下げ実現も、米国への譲歩が色濃くにじむ内容となった。
トランプ政権下で追加関税が上乗せされ現在27・5%となっている自動車関税は15%に引き下げられる。
米国産のコメの輸入拡大は年間77万トン程度を無税で輸入する現行のミニマムアクセス(最低輸入量)の米国枠の拡大で応じる。国内のコメ農家への直接的な影響は避けられた形だ。
一方、自動車関税はもともと2・5%で、大幅な引き上げには変わりない。
加えて相互関税15%はこれまでの日本の平均関税率3・9%の4倍近くに上る。
3月に追加関税が発動された鉄鋼・アルミニウム製品は、合意に含まれていない。
民間シンクタンクは今回の関税が日本の実質国内総生産(GDP)を0・55%押し下げるとする。
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合意では、米国に投資を行う日本企業に政府系金融機関が最大5500億ドル(約80兆円)の支援を行うことも盛り込まれた。
ただ投資が何を指すのかは明らかになっていない。
多額の投資は国内企業の投資先が米国に移り、国内経済の空洞化を招く恐れもある。本当に「ウィンウィン」なのか。全ての合意内容とかかるコストを明らかにすべきだ。
トランプ氏が全ての国・地域への相互関税を表明したのはことし4月だが、現在までに合意した国はイギリス、ベトナム、インドネシア、フィリピン、日本の5カ国だけだ。
従来、関税問題は世界貿易機関(WTO)で議論されてきた。米国の一方的な相互関税はそうした枠組みを崩壊させかねない。本来、日本は世界と協力して相互関税の不当性を訴えるべきだった。
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合意が実施されれば、国内経済の在り方が大きく変わる可能性がある。取引先企業の対米輸出減少に伴う受注減など特に中小企業への影響が懸念される。
トランプ政権の求める防衛費の大幅増額も気がかりだ。
米政権は半導体や医薬品などにも分野別の関税を設けようとしており、個別関税の拡大に歯止めをかけることも求められる。
戦後の貿易摩擦以来、日米貿易は再び油断できない時期を迎えている。各国と連携し、一国主義に走る超大国を制御する工夫も求められている。