やんばるの大自然を背景に「ジャングリア沖縄」が、きょうオープンする。
 今帰仁村と名護市にまたがる場所は約60ヘクタールと広大で、22のアトラクションを提供する大型テーマパークだ。
沖縄観光に新たに強力なコンテンツが加わることになる。
 海が主流の県内観光にあって、世界自然遺産からつながる亜熱帯の森を舞台にしたという点では、これまでにない試みと言える。
 パーク入り口で来場者を迎えるのはシンボルの「ジャングリアツリー」。オフロード車に乗って恐竜から逃げるアトラクションや、巨大な気球に乗り込んでの自然探訪、ジャングルから空に向かって飛ぶブランコ…。体験したことのない興奮と解放感を売りにする。
 2024年度に沖縄を訪れた観光客は約995万人で、18年度に次ぐ過去2番目の多さだった。25年度の目標値は過去最多の1040万人。
 北部地域には年間300万人が訪れる美ら海水族館があるものの、多くが近隣に宿泊しない「素通り観光」が課題となってきた。
 インバウンド(訪日客)の誘客も含め、北部エリアに人を呼び込み経済活性化の起爆剤にしたい、と開業を歓迎する声は多い。
 観光業は宿泊のほか飲食、運輸、農業など裾野が広い。ジャングリアの経済波及効果を15年間で約6兆8千億円とする試算もある。
 消費単価を上げるなど「量から質への転換」が叫ばれる沖縄観光において、その効果に期待が集まる。

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 ただ交通渋滞などへの懸念も少なくない。
 ジャングリア側は1日当たりの来場者を数千人~1万人と想定。那覇空港からシャトルバスを運行するなど対策を講じるとするものの、周辺住民からは交通混雑や、渋滞で救急搬送に支障が出ないかなど不安の声が上がっている。
 従業員用の住居確保で名護市内の賃貸需要が高まり、この春、名桜大の新入生がアパートを見つけられない問題がニュースとなった。地価の上昇も顕著だ。
 ジャングリアが比較的好条件で新たな雇用を創出している半面、人手不足が深刻な業界と人材の奪い合いも起きている。
 交通、住宅、雇用、どれも生活にとって重要な問題。地域の人たちが経済効果を感じられないまま、負担だけが増えれば相互理解は遠のく。
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 オーバーツーリズムが各地で深刻化している。
 交通渋滞の課題は、道路整備や公共交通機関の再編とも絡んでおり、行政が主導して抜本的対策を講じるべきだ。
 開業後、新たに生じた課題に対応するため、住民の声を迅速にすくい上げ、支援する仕組みも求められる。
 観光は沖縄のリーディング産業。
それだけに住民生活と調和を図り、地域を豊かにしていくという視点が欠かせない。
 「住んでよし、訪れてよし」の積極的な取り組みが求められる。
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