しかし、党内では首相退陣を求める声が強まっている。
懇談会では首相の続投に批判が相次ぎ、出席者の半分以上が退陣を要求した。総裁選の前倒しを求める意見も上がったという。
自民、公明両党は衆院に続き、参院でも少数与党に転落した。有権者が自公政治に「ノー」を突き付けたものである。まずここは、政権交代するのが筋だ。
参院選後に共同通信社が実施した全国世論調査で、望ましい政権の枠組みとして多かったのは「政界再編による新たな枠組み」、次いで「自公に一部の野党が加わった政権」だった。
与党が衆参で少数となるのは1994年の羽田政権以来である。今起こっている自民党の混乱は、内向きの権力争いにも見える。
党の顔をすげ替えれば、国民の信頼が回復できると考えるのは安易である。
自民派閥の裏金事件一つをとっても、国民の疑問に答えておらず、うやむやに放置したままだ。
たとえ首相交代で刷新のイメージをアピールしたとしても、不信感は消えないだろう。
必要なのは抜本的な党改革であり、さらには少数与党として政権運営にどう向き合っていくかの覚悟である。
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興味深いのは、世論の動向だ。
全国世論調査では、石破首相の進退について「辞任するべきだ」が51%、「辞任は必要ない」が45%と大きな差は見られなかった。
石破内閣の支持率が22・9%と、過去最低となっているにもかかわらずである。
メディア各社の世論調査でも、辞任の賛否は拮抗(きっこう)している。
選挙で大敗した一方で、SNSでは「#石破やめるな」の投稿が拡散。官邸前には約千人が集まり、プラカードを手に石破氏の続投を訴えるデモも行われた。
政権の保守化に対する国民の不安や懸念の表れにも見える。
しかし、ここで忘れてはならないのは、当面は少数与党での政権運営が続くということだ。連立の枠組みをどう構築し、政権を機能させるために何が必要か。その仕組みづくりにこそ、全力投球すべきだ。
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本来なら、野党への政権交代が実現する局面である。それなのに、野党が結束する気配は一向に見えてこない。
参院選では、野党各党が消費税の減税や廃止を訴えた。その主張に共感し、一票を投じた有権者も多かったはずだ。物価高や生活への不安に応える必要がある。
減税の財源や期間はどうするのか。公約実現のためにも野党が協力し、政策協議に着手すべきだ。
与党を過半数割れに追い込んだ責任を果たさなければならない。