沖縄県立博物館・美術館(那覇市、里井洋一館長)は沖縄戦後80年博物館特別展「戦災文化財」(主催・同館、特別協力・沖縄タイムス社)の関連企画として、沖縄戦の痕跡や平和を願う姿などを撮影した「未来へ伝えたい“戦災文化財”」の写真を募集している。締め切りは8月15日。
特別展で展示、公開する。戦災で被害に遭った文化財の写真だけではなく、沖縄戦の爪痕を残す風景や記憶を継承する場面、戦没者への鎮魂の祈り、尊厳と人権を守る行動などを想定している。
 文化を創り、守ることの原点に平和がある。人命を奪い、文化を破壊する戦争を二度と起こさないと誓い、平和を求めてきた人々の姿や営みを文化的な財産と捉え、象徴する写真の応募を広く呼びかけている。
 応募資格は県内在住者(18歳未満は保護者の了承が必要)。未発表の作品2点まで。
 企画の趣旨を伝えるため、県立博物館・美術館の学芸員や沖縄タイムス社が撮影した写真例を紹介する。

美しい岩礁海岸の風景。80年前、この地は沖縄戦終焉(しゅうえん)の地。悲惨な戦争を教訓に、美しい自然と平和で豊かな社会を未来へと残したい(写真と文 県立博物館・美術館提供)

糸満市の海岸 荒崎(2018年・糸満市) 

美しい岩礁海岸の風景。80年前、この地は沖縄戦終焉(しゅうえん)の地。悲惨な戦争を教訓に、美しい自然と平和で豊かな社会を未来へと残したい(写真と文 県立博物館・美術館提供)

銃弾痕と砲弾痕のある民家の石垣(2025年・糸満市)

沖縄戦当時、大きなガジュマルがあったという糸満市の古民家。
ここに隠れた生徒と先生。80年前の沖縄戦の痕跡を残すこの石垣は、悲惨な出来事を二度と繰り返してはならないと訴えている(写真と文 県立博物館・美術館提供)

戦後62年・バスに列する抗議の県民(2007年・宜野湾市)

住民の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍関与の表現が削除・修正された教科書検定。意見の撤回を求めた県民大会の会場に着くまで何時間かかっても、「声を上げなければ」という思いは皆同じ(写真と文 県立博物館・美術館提供)

戦没した親戚に祈りを捧げる(2023年・糸満市)

6月、親子3世代で出かけた平和の礎。戦没者を悼み平和を願う思いが、世代を超えて受け継がれてほしいと思います(写真と文 県立博物館・美術館提供)

沖縄タイムス紙面の「平和の礎」刻銘者名簿の展示に見入る観覧者(2025年6月22日、那覇市・沖縄タイムス社)

沖縄タイムス社は沖縄戦などで亡くなった「平和の礎」の計24万人余の刻銘者の名前を6月10日から慰霊の日前日の22日まで、毎日4ページに分けて掲載した。全52紙面をつなげると背景に「平和の礎」と「ゲットウの花」の風景写真が現れた

県民の営み 未来へ届ける
崎原恭子(県立博物館・美術館主任学芸員)
 沖縄戦では住民を巻き込んだ激しい戦闘が繰り広げられ、多くの尊い命とともに町並みや風景だけでなく、先人たちが生み出した数々の文化財も失われました。戦争で被害を受けた文化的な財産のことを“戦災文化財”といいます。琉球王国の中心地だった首里や港町として発展した那覇には、戦前に旧国宝に指定された沖縄を代表するような文化財が残されていました。しかしその多くは、1944年10月10日の大空襲や45年の地上戦などを経て、破壊・焼失・散逸などの事態にさらされました。
 戦後、収容所から解放されて地域に戻った住民は、荒れ果てた町を立て直し、くらしを取り戻すために、ゼロからの出発を余儀なくされました。そのような苦しい状況下にもかかわらず、有志によって焦土の中から散乱した文化財の残欠が収集されました。
 一方、さまざまな方々の尽力によって、戦利品としてアメリカへ持ち去られた文化財のいくつかが返還されました。戦災を受けながらも辛うじて形を留めた文化財は琉球・沖縄の歴史や文化を示す貴重な資料であり、後世に伝えていくべき沖縄の財産となっています。
戦後復興や調査研究の進展に伴い、首里城正殿や守礼門などの建造物や染織・漆器などの美術工芸品を復元する等、多様な取り組みが進められています。
 沖縄県民の4人に1人の命が奪われた悲惨な沖縄戦の終結から80年の歳月を経る中、次第に戦争体験者が少なくなり戦争の教訓の風化が課題となっています。戦争でさまざまなものを失い、多くの傷を負った沖縄の悲しみを繰り返さないため、人々は戦後80年にわたり心血を注いで平和を求めてきました。遺骨収集や慰霊祭の実施、慰霊塔(碑)の建立、沖縄戦体験者の証言の聞き取りと記録、沖縄戦関連資料や遺跡の調査・研究、地域や学校などでの学習や演劇などを通じた公演等、いくつもの視点から沖縄戦の教訓と平和を考える活動が行われてきました。
 一方、沖縄に駐留する軍事基地を起因とした事件・事故が絶えず、反戦・平和を訴える活動も続けられています。このような沖縄の平和を求める営みは、沖縄が歩んできた歴史とくらしを示す文化的な財産であり、未来へ伝えていきたい平和を求める沖縄の姿だと考えています。
 現在、博物館特別展「戦災文化財」の関連企画として実施している写真募集で、“戦災文化財”の定義にとどまらず、あなたが未来へ伝えたい、沖縄戦の記憶や痕跡、平和を願って求める姿などを撮影した写真にメッセージを添えて応募していただくことで、より多くの視点から平和を考えることができると幸いに思います。
文化財通して沖縄の軌跡
9月30日から80年特別展

旧円覚寺関係木彫資料 釈迦如来坐像(県立博物館・美術館提供)

 県立博物館・美術館の沖縄戦後80年博物館特別展「戦災文化財」(主催・同館、特別協力・沖縄タイムス社)は9月30日から11月30日まで、那覇市内の同館で開催される。
 沖縄戦で破壊された文化財の収集・復元や、米国に持ち去られた琉球王家ゆかりの美術工芸品の調査・返還などをテーマに展示する。
 特別展は3章に分けて展示される予定。第1章は「失われた沖縄の文化財-破壊・流出」と題し、文化財が失われる前の沖縄の風景や戦前の文化財保護活動を紹介。1944年10月10日の10・10空襲や凄惨(せいさん)な地上戦で破壊、略奪された文化財を取り上げる。


ようとれのひのもん 極楽山碑文(県立博物館・美術館提供)

 第2章「取り戻した沖縄の文化財-収集・復元・返還」は、沖縄戦直後に始まった文化財の収集活動や米国から返還された文化財とそのエピソードを紹介する。第3章は、「平和を求めて」として、県民から募った「未来へ伝えたい“戦災文化財”」の写真を展示する。
 戦災文化財を通して沖縄戦の傷ましさを浮き彫りにし、平和の重要性や沖縄独自の文化財を取り戻した軌跡を紹介する。
応募規定
(1)「未来へ伝えたい“戦災文化財”」を題材にした写真
 (1)県内在住の誰でも応募できる。
 (2)1人2作品までの応募とし、応募は未発表の作品に限る。
 (3)応募者本人が撮影した作品に限る。
 (4)撮影者不明や転用写真は応募できない。
 (2)応募には以下の項目を明記する。1.氏名 2.ニックネーム(任意) 3.住所 4.年齢 5.連絡先電話番号 6.メールアドレス 7.作品名(タイトル)は20文字以内 8.作品説明(メッセージ)を100文字以内で明記する 9.撮影年月日(月日はなくても可) 10.撮影場所(市町村名まで) ※以上の項目を明記し、ホームページの専用フォームか、郵送で応募する。
 (3)応募は、電子データ(JPEG形式)およびプリント写真に限る。
 (4)写真のデータ量は、拡大して展示できる3MB以上を推奨し、30MB未満のものとする。画面比率は、4:3または3:2を推奨する。

 (5)カラー・モノクロいずれでも可能。
 (6)複数の写真を組み合わせた「組み写真」は受け付けない。
 (7)元画像のレタッチ(色調補正やシャープネス、コントラスト変更等の簡単な補正)は可能だが、画像処理ソフト、AIを利用した作品の画像合成、削除、被写体の変形、色相の変更など創作・加工した写真は対象としない。
 詳細な応募規定や注意事項などはこちら(https://okimu-entry.com/)から。応募先・問い合わせは、写真募集事務局。〒901ー1111、南風原町兼城577、光文堂コミュニケーションズ内(企画編集部内)、電話090(1947)5114(平日午前9時から午後5時)。
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