落語家・立川寸志(すんし)が8月16日(土)に、沖縄で初の独演会を那覇市三原の花園寄席(アベニア)で開催する。現在、真打(しんうち)昇進を目指して、「1000人の認定証を集める」挑戦をしている寸志。
44歳で入門した芸歴14年の「遅れて来た落語少年」は、笑いと人情の落語を届けたい、と意気込んでいる。(社会部・真栄里泰球)

立川寸志

出版業界から落語の世界へ
─ もともと出版社にお勤めだったと伺いました。
 立川 大学卒業後、出版業界に入り、マタニティー・ベビー雑誌などにたずさわりました。
 ただ、ある時から自分の将来がある程度見えてしまって、「なんとなく面白みに欠けるな」と感じるようになったんです。若い頃から落語が大好きで、特に私の大師匠にあたる立川談志師匠に強く惹かれていました。
 編集者として談志師匠の弟子である師匠談四楼と関わる機会があり、そのうちに、昔抱いていた「落語家になりたい」という気持ちが再燃してしまったんです(笑)。もう抑えきれなくなって、師匠談四楼の門を叩きました。
 ─ 落語の世界に飛び込んで感じる魅力とは?
 立川 やはり、お客様の前に一人で座り、15分、20分、長ければ1時間近く語り続ける。その緊張感と一体感ですね。中学生の頃から落語を聴いていて、自分の中に落語が染み込んでいる感覚があります。それを表に出して、お客様と一緒に楽しめるというのは、本当に幸せなことです。

立川寸志沖縄初独演会のフライヤー

 ─ キャッチフレーズは「遅れて来た落語少年」ですね。

 立川 そうなんです。44歳で入門したという年齢的な意味以上に、心はずっと“落語少年”のままなんです。中学生の頃からラジオで昔の名人や時代の人気者たちの落語を聴いていて、特に立川談志師匠の落語への愛し方にものすごく共感していました。
 今年で入門から15年目になります。そろそろ真打を目指すタイミングです。自分の会を開いたり、色々な会で勉強したり。そうした積み重ねが、真打昇進につながっていくと思っています。
真打目指し「1000人認定証」挑戦
 ─ ユニークなのが、通算1000人の認定証をいただくという取り組みですね。
 立川 真打になるには、「師匠に認められる」ことが必要なのですが、それだけでなく「お客様に認められる」ことも大事ではないかと考えました。そこで、私の落語を聴いて「この人は真打になってもいい」と思ってくださった方に、認定証に名前を書いてもらい、1票としてカウントする。それを1000票集めたら、談四楼師匠に真打昇進をお願いしようという企画です。
 
 これまで7回開催し、現在はあと60人ほど。
次回の会で、1000人達成を目指しています。もちろん最終的には師匠の判断ですが、「こんなにも多くの方に応援していただいている」という証しとして、1000人の票を集めることに意味があると思っています。場合によっては「よくやった、この調子で1500人集めろ」と言われるかもしれませんけど(笑)。
 ─ 気が早いようですが、真打昇進後の展望についてもお聞かせください。
 立川 自分の会をもっと開催していきたいですね。これまで支えてくださった方々に、しっかり恩返しができるような、力のある落語を届けたいと思っています。
 ─ 真打昇進の際には芸名を変えることもあると聞きます。
 立川 そうなんです。実は、いま一番悩んでいるところでして(笑)。落語界では、真打になる際に名前をどうするかをまず最初に決めるんですね。新しく作る扇子や手ぬぐいなどにもその名前を入れますから。
 ─ 現在の「寸志」というお名前は、どういった由来なのでしょう?
 立川 師匠が私を弟子にしてくださるときに、この名前を与えてくれたんです。

 
 師匠談四楼の前座名でした。談志師匠が(昭和の名人として名高い)八代目・桂文楽師匠に「今度新しく入った寸志でございます」と紹介したとき、文楽師匠が「すんちゃん、ですね」と喜んだという話があります。
 これは落語『酢豆腐』に出てくる場面にちなむもので、気取った若旦那が、「しんちゃん」という町内の若い衆を「すんちゃん」と呼ぶくだりがあるんです。文楽師匠が『酢豆腐』を得意としていたので、喜ばれたのでしょう。師匠は二つ目になるときに名前を「談四楼」に変えましたが、私はこの「寸志」という名前が気に入っていたので、そのままにしてもらいました。
 ─ では、もし名前を変えるとなれば、大きな決断になりそうですね。
 立川 ええ。まだ決めきれていません。いっそ、名前もお客様に投票してもらおうか……なんて、冗談で言っているくらいです(笑)。
 ─ 改めて、沖縄のお客様にメッセージをお願いします。
 立川 今回、私を呼んでくださった花園寄席さんには、東京や上方から多くの落語家が出演されてきました。きっとお客様は、さまざまな落語の魅力をすでに味わってこられた方々だと思います。
私は、笑いながらもしみじみと心に残る「人情味のある噺」をお届けしたいと思っています。
 落語は言葉のやりとりだけで成り立っているようで、実は語りの“メロディー”や“調子”といったものも、大きな魅力なんです。「笑い」「じんわり感動」「聴いていて心地いい」……。そんな時間をお届けできればと思っています。ぜひ気軽に、楽しみにいらしてください。
【公演概要】
第17回 花園寄席「立川寸志 沖縄初独演会」
8月16日 午後4時開演(午後3時半開場)
会場:花園寄席(アベニア) 那覇市三原1-14-5
木戸銭:2,500円。75歳以上は1,500円。
問い合わせ:090(9497)9484(知花)
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44歳で落語家に転身! 「遅れて来た落語少年」立川寸志が初の沖縄独演会にかける情熱「人情味ある噺を届けたい」
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