沖縄県不動産鑑定士協会(濱元毅会長)はこのほど、2025年5月の県不動産市場DI(景況感指数)レポートを公表しました。マーケットの最前線に立つ県内不動産業者(276社)の肌感覚を「DI」という指標に落とし込み、半年に一度、見える化したものです。
沖縄の不動産の今とこれからを手っ取り早く知りたい方にお勧めのこのレポート、県内8エリア(那覇市西部、那覇市東部、那覇市小禄、那覇市周辺部、沖縄本島南部、本島中部、本島北部、宮古・八重山の先島)の地域別情報やグラフ、解説コメントなどを交えて、詳しく読み解きます。(デジタル編集部・篠原知恵)
【一口メモ】DIとは 現況や先行きの見通しを測る指数のこと。地価動向DIであれば、「上昇」と判断した業者の割合から「下落」と判断した業者の割合を引いたもの。プラスであれば賃料動向の景況感は前向き(賃料は上昇傾向)にあると捉えられる。
調査開始以来初めての事態
5月の不動産市場DI調査で、最も「特徴的」だった結果ー。それは 、市場活況度をみる取引件数動向DIの「住宅地」「マンション」「一戸建て」の値だ。
写真を拡大 県内の不動産市場DI値(取扱件数)
住宅地でマイナス4・9、マンションでマイナス27・0、一戸建てでマイナス12・9と、前期(2024年11月)に比べて、大きく落ち込んだ。
特に、マンションは2021年11月以来7期ぶり、一戸建ては調査開始の2014年11月以来初めて、県内の調査対象8エリア全てでマイナスの値となり、沖縄不動産市場の新たな局面を印象付けた。沖縄県不動産鑑定士協会は「マンションと一戸建ての市場で冷え込みが急速に進んでいる」とみている。
写真を拡大 地域別の取り扱い件数DI値(マンション)
マンションの取り扱い件数動向DIを地域別にみると、前回2024年11月から最も大きく落ち込んだのは那覇市小禄(前回比44・6ポイント減、5月のDI値はマイナス35・1)、那覇新都心を含む那覇市西部(前回比40・8ポイント減、5月のDI値はマイナス15・1)だった。
全8エリアで、半年後の2025年11月の予測値もマイナス域を脱せずにいる。
市場の冷え込み、要因は?
背景には、建築費や人件費、地価の高騰を背景に、物件の価格水準が上がり、買い手にとって手が届きづらくなっていることがあるという。回答した不動産業者のフリーコメントによると、金利の上昇や金融機関の住宅ローン審査厳格化といった買い手側の状況も購入意欲の冷え込みを助長させているようだ。
こうした傾向に裏付けを得るため、県不動産鑑定士協会は今回、DI調査にあわせ、半年前に比べて物件の売り出しから成約までの期間に変化があったかを聞くアンケート(市場滞留期間調査)も実施した。
それによると、5月の時点で、売り出しから成約までが半年前に比べて「長くなった」と答えた割合は住宅地で約50%、マンションで約54%、一戸建てで約60%と、いずれも50%を超え、特にマンションと一戸建てで「売れにくくなっている」状況が顕著になった。「おおむね変わらない」は宅地で約46%、マンションで約44%、一戸建てで約37%。「短くなった」はいずれも5%以下にとどまっている。
需要衰えてはいないのに
地域別にみると、宅地は首里地区など那覇市東部で、マンションは沖縄本島中部で、一戸建ては本島南部で売り出しから制約までの期間が「長くなった」の回答割合が高い。
大島不動産鑑定宮古島支社・市社長の半場吉朗さん(県不動産鑑定士協会)「賃貸市場の動向などを踏まえると、沖縄で、住宅需要が衰えているわけではない。昨今の不動産価格高騰や金利上昇の影響を受けて、買い手が購入を躊躇している可能性が高い。市場の冷え込みが一時的か長期的かはまだ判断できない」
マンション価格高止まりか
不動産業者コメントからは、「高すぎる」と住宅購入を買い控える層が一定いることがうかがえる。
「分譲マンションはかなり高値取引の印象。
「価格が高止まりし、購入できる人が限られている」(那覇市西部)
「価格が高く、購入客の動きが悪い」(本島中部、那覇市小禄、那覇市西部)
「マンション価格は高止まりか。今後、徐々に落ち着いてくるのでは」(本島中部)
「金利上昇により買う人が減ったように思う。新築購入は増えているが、中古は難しく時間がかかるようになった」(本島南部)
「価格上昇を肌で感じている売り手は売り出し価格を高めに希望する場合がほとんど。だが、買い手はは金利上昇を受けて動きが少し鈍い傾向にある」(本島中部、那覇市小禄)
地価動向、半年後の予測は?
写真を拡大 県内の不動産市場DI値(地価)
2025年5月時点の地価動向DIは、住宅地が37・1で8期(4年)連続、商業地は45・8で7期(3年6カ月)連続でプラスを維持した。
一方、住宅地、商業地ともに、沖縄本島南部を除いた7エリアで、前回(2024年11月)のDI値は下回った。上昇感は保ちつつも、その勢いが鈍化した格好だ。沖縄県不動産鑑定士協会は「地価下落の兆しというよりも、高騰の中で市場関係者が上限を意識しつつある」と分析する。
好調な本島南部は、コストコ開業に加え、コストコ近接地に那覇空港自動車道に連結する「つきしろIC」が2020年代後半に使用開始予定だ。周辺は、住宅地や観光拠点の整備といった大規模な土地区画整理事業(施工面積18・6ヘクタール)も進む。事業完了は2026年3月の予定。
南城市つきしろIC南土地区画整理事業ゾーニング図案
どうなるジャングリア特需
【住宅地詳報】
写真を拡大 地域別の地価動向DI値(住宅地)
5月の地価動向DI(住宅地)を地域別にみると、ジャングリア開業を控える沖縄本島北部が53・1で最も上昇感が強く、唯一の50ポイント台となった。次いで本島南部46・6、那覇市西部44・8、那覇市周辺部43・4、先島地区42・9、本島中部36・0、那覇市小禄地区31・8、那覇市東部17・2と続く。
今帰仁村にオープンしたテーマパーク「ジャングリア沖縄」=2025年7月19日(ドローンで写真部・小宮健撮影)
半年後の予測値でも、全8エリアで引き続きプラスを維持する見込みだ。中でも本島北部は47・3と最も高い。沖縄県不動産鑑定士協会は「半年後の予測でも、本島北部は県平均の2倍を超える高い水準のDI値を維持している。多くの市場関係者がジャングリアによる地価上昇の影響がしばらく続くとみている」と分析する。
上昇感が突出するエリア
【商業地詳報】
5月の地価動向DI(商業地)を地域別でみると、沖縄本島南部が59・1、先島地区が55・0、那覇市西部54・3と上昇感が突出して高い。次いで、本島北部45・7、那覇市周辺部44・8、那覇市小禄地区43・4、本島中部42・4、那覇市東部33・3と続く。
半年後の予測値は住宅地同様、引き続きプラスを維持する見込み。中でも島外からの投資が盛んな先島地区が46・7%と最も高い。
「増額交渉が進まず」
写真を拡大 県内の不動産市場DI値(賃貸動向)
賃貸市場動向の賃料DIは、2025年5月の今回、共同住宅、店舗ともにプラスを維持した。過去最高だった前回(2024年11月)に比べて約30ポイントの大幅減となり、上昇感の勢いは急速に落ち着いた。稼働率DIも前回に比べ大幅ダウンし、共同住宅で3・7、店舗で0・5とかろうじてプラスを保った。
半場さん「賃貸市場動向のDI値が大きく下落した背景には、市場関係者が、賃料はすでに上限近くに達しており、借り手の所得水準等を踏まえると、これ以上の上昇は難しいと判断し始めた兆候がうかがえる」
不動産業者のフリーコメントからは、高騰する地価や建築費を背景に上がり続ける賃料に、葛藤する現場の様子もみてとれる。
「新築賃貸物件の賃料上昇がまだまだ止まらない」(那覇市東部)
「本島西側を中心に地価上昇が著しく、賃貸市場も築年数が極端に古くない限り賃料は上がっていくと思う」(本島中部)
「ますますの土地価格上昇に加え、建築単価の上昇が重なり賃料上昇はまだまだ続く」(本島北部)
「空室がない状態のため、家主から家賃の値上げ相談がある」(本島北部)
「賃料増額希望の家主が増えてきているが交渉がうまくいかないケースも多く、管理業務の大きな負担となっている」(那覇市西部)
「賃貸物件の稼働率がやや落ちてきている(1~2%)。ただし、建築費も高いため、なかなか家賃を下げることが難しい物件も多い」(本島南部)
軍用地の大幅下落、要因は
軍用地は下落の傾向が一層顕著となった。
2025年5月の地価動向DI調査は、過去最低のマイナス66・3となり、2020年5月以降11期連続のマイナスを記録した。前回(2024年11月)に比べても37・2ポイントの大幅な下落だ。取扱件数動向DIも同様に下降の一途をたどる。
写真を拡大 県内の不動産市場DI値
沖縄県不動産鑑定士協会が、DI調査にあわせ、半年前に比べて物件の売り出しから成約までの期間に変化があったかを聞いたアンケートでも、2025年5月時点で「長くなった」と答えた業者が約62%にも上った。
濱元会長「軍用地に対する投資マインドが後退している様子がうかがえる。コロナ禍以前に軍用地の地価がかなり上昇していたことに加え、昨今は投資対象の選択肢、税制優遇措置が広がったことで、軍用地の魅力が相対的に薄れてきているのかもしれない。軍用地は購入に百万円単位が必要になるため、NISAなど小口化された投資対象に資金が流れたとも考えられる」
半年後の予測で地価、取扱件数ともにDI値の改善が見込まれつつ、引き続き地価マイナス47・4、取扱件数マイナス44・3という厳しい値となっている。


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