最初から最後まで苦しい。少女の頃に受けた傷が癒えないまま成長したエヴァ。
友達もなく、仲間もなく、両親とも疎遠で居場所もない。誰にも愛されず、愛された記憶もないと感じるだけで苦しいのに、自分を踏みにじった相手はSNSの向こうで笑っている。
 私でも復讐(ふくしゅう)したくなるかもと思ってしまうようなエヴァの痛みと乾き。誰か、彼女を抱きしめてと叫びそうになるが、きっと今の彼女はそれさえも拒む。放り出されてしまった彼女の傷は折々に血を吹き、声にならない“慟哭(どうこく)”が見る者の胸をふさぐ。
 終始苦しいと感じるこの映画が作られた意味は、傷を抱え続ける者が、見えないからと言って癒えたわけではないと知らしめる事。子どもを守るべき大人が、自分の事しか見えない子どものままでは未来はないという事だろう。
 (スターシアターズ・榮慶子)
◇パレットで上映中
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