ALPVは全長約19メートル、幅約2・5メートル、基準排水量は約8・3トンの自律型物流配送システムだ。
紛争地域で活動する部隊に対し、沿岸部から食料や医薬品などの物資を届け、後方支援としての役割を担うとされている。
沖縄防衛局は補給物資の輸送を実施するとして、昨年10月から今月までの一時配備を県に伝えていた。
那覇港湾施設(那覇軍港)を拠点に、うるま市のホワイトビーチや金武町のレッドビーチなどの本島沿岸付近で試験運用していた経緯がある。
一方で、当初から無期限配備への地ならしではないか、との懸念があった。実際、その通りになったのである。
嘉手納基地では2023年10月以降、当初は一時展開と説明されていた無人偵察機が、相次いで無期限配備となっている。
MQ9(空軍)のほか、昨年10月には全幅約40メートルもある大型のMQ4(海軍)が、約半年間の一時配備を終えていったんグアムに戻った後、今年4月に再配備された。
昨年8月には海兵隊のMQ9が約1年間の期限付きで暫定配備され、現在も運用中だ。
今月期限を迎えるが、今後の対応方針は示されていない。無期限に切り替わる可能性は否定できない。
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米軍の相次ぐ新装備配備の背景にあるのが、台湾有事を念頭に置いた新たな作戦構想「遠征前方基地作戦(EABO)」だ。
小規模な部隊を県内離島やグアムなどの島しょ地域に分散させて、機能的に運用する。
作戦遂行に当たって、機動力があり、少ない人手で済む無人機や無人艇は重要なツールとなる。
EABOに基づく新たな動きがミサイル化である。
米国防総省は今月、米軍と自衛隊が石垣島などで9月に実施する大規模な実動訓練「レゾリュート・ドラゴン」で、米海兵隊の最新型の地対艦ミサイル「ネメシス」の展開を検討していることを明らかにした。
対中戦略の次期主要兵器と位置付けるネメシスは、遠隔発射機能を備えた無人の戦術車両に短距離ミサイルを搭載する。
これらの新装備は、今後の基地の役割を変えるものだ。
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こうした動きに呼応するように、防衛省が本年度末にも国産初の長射程ミサイルを陸上自衛隊健軍駐屯地(熊本市)に配備すると報じられた。
将来的に、沖縄の勝連分屯地への配備も見据える。
基地返還は進まず、負担軽減も目に見えない中で、新たな配備だけが積み重なっている状況だ。
もはや基地負担軽減のインセンティブは失われつつある。
一連の変化が、沖縄の基地にどんな影響を及ぼすのか。負担軽減をどう進めるのか。政府は説明すべきだ。