1回戦に勝利し、2回戦を控えていた。
部内での暴力事案を巡る告発がSNSで広がり、中傷が相次ぎ、学校の爆破予告や、登下校時に生徒が追いかけられる事件も起きた。学校は大会運営への影響と、生徒らの安全確保を理由に辞退を決めた。
学校側の判断は尊重されるべきだろう。一方で、いくつかの疑問や課題が挙げられている。
暴力事案は1月に発生。寮内で野球部の上級生4人が下級生1人の頬をたたいたり、胸ぐらをつかんだりしたとされる。学校は日本高野連に報告し、3月に厳重注意処分を受けた。
高野連は今年2月、連帯責任として、対外試合禁止とするのは「10人以上による学生野球憲章違反行為」とし、「違反が4人以上」などの場合は注意・厳重注意とするなど処分基準を明確化した。広陵への厳重注意処分は、同憲章の基準で公表されなかった。
ところが大会直前に被害生徒の保護者とされるアカウントから告発があり、加害部員は「10人ほど」とされた。高野連に報告すれば対外試合禁止となると監督から口止めを示唆され、人格を損なうような言葉をかけられ、被害生徒は転校を余儀なくされた、という。
認識に大きな食い違いがある。この差はなぜ生まれたのか。学校側には真相究明を求めたい。
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高校野球では、暴力事件のほか、飲酒、喫煙などでも厳しく部全体の責任が問われてきた。連帯責任による対外試合禁止や出場辞退の処分が相次いできた。
暴力は決して許されるものではない。被害に遭った元部員のケアも重要だ。
ただ、暴力事案と関係のない選手まで思わぬ形で甲子園を去る結果となった。その無念さはいかばかりか。高野連は、事実関係や処分の判断理由など最低限の情報を公表する体制を整える必要がある。
1月の暴力事案では被害生徒が被害届を出し、警察が捜査している。また、別の元部員から被害の訴えがあり、学校の第三者委員会で調査しているという。
被害者の納得を得るほか、臆測や誤情報を防ぐためにも処分には透明性の確保が欠かせない。
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SNSは桁違いの速度と規模で拡散する。高校野球の注目度の高さが加わり、真偽不明の情報があふれ、批判や中傷にさらされた。
悪意を持って加工した画像や、爆破予告などの投稿は、名誉毀損(きそん)や威力業務妨害などにもつながる。
匿名の世界で歯止めが利かず、「ネットリンチ」に発展する危うさを浮き彫りにした。
学校や高野連に限らず、SNS時代に対応する危機管理体制の構築が必要だ。
社会も球児たちに対し、高潔性を求め過ぎていないか。ネットでの制裁に安易に加担しないよう一人一人が認識を改めたい。