石垣市長選がきのう投開票され、自民、公明が推薦する前市長の中山義隆氏が5選を果たした。新人で元市議の砥板芳行氏は敗れた。

 市の公文書改ざん問題で不信任決議を受けた中山氏が、自動失職したことに伴う異例の選挙だ。「市政の継続か、刷新か」が最大の争点だった。
 中山氏は4期15年の市政運営の「成果」をアピールし、自民・公明の支持層をまとめた。
 前面に打ち出したのは、台湾航路の新設による経済活性化策だ。国の予算措置を受けて実現は目前とし、「台湾との間でヒト、モノが動き、物価高も抑えられる」とした。
 児童生徒の島外大会への派遣費無償化や妊産婦支援の拡充など子育て支援も掲げた。「東京や那覇へ行って予算を取るのが市長の仕事」とし、国政与党との連携の必要性を訴えた。
 折からの物価高で輸送コストが高騰し、離島での生活は厳しさを増している。有権者は、足元の暮らしを良くするための施策の実現に期待したと言える。
 15年前、中山氏は多選自粛条例制定を公約に掲げ、5期目に臨む相手候補の「多選批判」で初当選した。
 一転ことし3月に当時の公約を撤回し、選挙に臨んだ。
 当選を重ねると、おごりが出たり、独断専行に陥ったりしがちだ。
多選はスキャンダルの温床にもなりやすい。
 市役所ではこの間不祥事が相次いでいる。
 中山氏には多様な声に耳を傾け謙虚な行政運営を求めたい。
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 不信任を巡る首をひねるような経緯ももう一つの争点だった。
 市政野党と中立の一部が支援する砥板氏は、公文書改ざん問題に端を発した不信任決議の経緯を疑問視した。
 野党が「長期政権の弊害」として不信任決議案を提出すると、与党も賛成し可決された経緯がある。
 にもかかわらず、与党はその後、問題を検証する百条委員会の設置に反対した。
 中山氏は市長選立候補を表明した際、「(百条委での)職員負担を避けるため、失職して市民に信を問うことでまとまった」と与党との「結託」を示唆している。
 不信任を利用した「疑惑」はくすぶり続けている。議会のチェック機能を含め、市民の疑問にこたえる必要がある。行政の信頼回復を図るためにも総括が不可欠だ。
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 投票率は今回、前回を7・54ポイントも下回り、過去最低の63・00%となった。

 政治不信が影響したのではないか。当選でみそぎを済ませたことにはならない。
 市では自衛隊の配備に伴い、大規模な日米合同訓練が実施されるようになった。米戦艦の寄港も相次いでいる。漁港では米軍が単独で救難訓練を実施する事態も発生した。
 基地の負担増に対しては住民の立場に立った姿勢が求められる。
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