イタリア女性といえば強く優しく美しいマンマのイメージが強いが、マンマも昔は若かった、というか、イタリアに限らず女性に限らず、経験だけが私たちを強くたくましく育てる。特に、つらい、悲しい、切ない、寂しい、そんな感情に育てられた気がする。

 洋裁店で衣服を縫って働く16歳の少女ジーニアは、家と職場を行き来するだけの生活の中で、自分の中にあるはずの何かを見いだせず孤独を感じている、ように見える。
 彼女が輝き出すのは一瞬だった。一つの出会いが少女の世界を広げ、大人にする。自分より広い世界を知っている人に出会い、憧れ、ついていくいくうちに、初めての世界に触れ、己を知っていく。
 相手は画家のモデルをする少し年上の女性アメーリア。ムソリーニのファシスト政権が影を落とす中、少女の危うくて魅惑的な夏が幕を開ける。(桜坂劇場・下地久美子)
◇桜坂劇場で上映中
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