那覇市首里大名町の「お食事処ガロ」が7月31日、39年の営業に幕を下ろした。閉店の2日前、店内は食べ納めに来た客であふれた。
長年フライパンを振りガロの味を提供した饒平名一さん(72)と、客席を切り盛りした妻の順子さん(72)に「今日もおいしかったよ」「ありがとうね」など温かな言葉が送られた。(社会部・末吉未空)
 店は1986年、サンドイッチなどの軽食が中心の喫茶店として同市泊で始まった。当時、周辺に予備校や専門学校があり学生が多かったことから「学生街の喫茶店」を歌う音楽グループ「ガロ」から名付けた。
 18年前、店舗オーナーの都合で首里大名町に移転。客層が変わり営業スタイルを喫茶店から食堂へ切り替えた。最初は人通りも少なく戸惑ったが、泊からの常連客が訪れ営業を支えた。学生だった客が親になり子どもと食べに来たり、「孫のために」と持ち帰りを注文したりする人もいた。
 看板メニューの一つ「チキンとポテトの重ね焼き」は、幅広い年代から人気だった。生卵がのったナポリタンを鉄板ごと提供するスタイルは、喫茶店時代から変わらず愛された。
 閉店を決めたのは「元気なうちに悔いなく終えて、自分の好きなことをして過ごしてもいいかな」と思ったから。これまでの感謝を伝えようと「39年間 感謝です ガロ」と書かれたボールペンを客にプレゼントした。順子さんは「『おいしい』の一言がうれしくてここまで続けてこられた。
39年間の味が2、3世代にわたりつながったのがうれしい。きちんと感謝を伝えてお別れしたい」と目を細めた。
 8年ほど前から店に通っている大阪府出身の森川玲さん(31)は「実家の味」との別れを惜しんだ。大学進学を機に沖縄に来て、初めてガロの料理を食べた時、「大阪の祖父母が作ってくれた味にそっくり」と感激した。「社会人1、2年目の頃は疲れた時によく食べに来た」と懐かしそうに振り返り、「もうこの味が食べられなくなると思うとさみしい」と名残を惜しんだ。
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「実家と同じ味」閉店惜しむ客であふれる 那覇市の食堂ガロ、39年で幕 愛された「チキンとポテトの重ね焼き」
39年間夫婦で営業を続けた饒平名一さん(左)と順子さん=7月29日、那覇市首里大名町・お食事処ガロ
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