7月の参院選で最大の争点だった物価高対策を巡って、「決められない政治」が続いている。家計は厳しさを増しているというのに、与野党とも選挙で訴えたことを忘れているのではないか。
公約は守らなければならない。
 自公は参院選公約に国民1人当たり2万円の給付を明記した。
 自民党大敗を受け、野党はこの現金給付案に反発を強めており、政府、自民内では給付の対象者を見直す案が浮上している。子どもや困窮世帯に絞ろうというものだ。 
 秋の臨時国会で補正予算案の提出を想定するも、少数与党のため、成立には野党の一部を取り込まなければならない。だがその見通しは立っていない。
 参院選で立憲民主党など野党は消費税の減税や廃止を掲げた。民意は「現金給付」より「消費税減税」を選んだ形だ。
 しかし減税といっても野党各党の溝は深い。
 立民は最長2年間食料品の税率を0%にすると主張。日本維新の会も2年間の食料品税率0%を掲げ、国民民主党は実質賃金が持続的にプラスになるまでの一律5%を訴える。
 廃止を訴えるトーンもそれぞれ違い、意見集約のめどは立っていない。

 有権者が最も関心を寄せていた政策にもかかわらず、選挙が終わった途端、物価高対策を巡る議論は足踏み状態だ。
 過半数割れで何も進められない与党、バラバラでまとまりのない野党。どちらも実現できない異常な状態が続いている。
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 共同通信社が23、24両日実施した全国電話世論調査で、消費税減税を石破茂政権は「受け入れるべきだ」が61・5%に上った。
 参院選大敗の原因も「物価高への対応など自民の政策がよくなかった」が30・6%で2番目に多かった。
 決断が求められる局面だが自民党内から聞こえてくるのは、「総裁選前倒し」「石破降ろし」といった内向きの議論だ。
 先の世論調査では首相の辞任は「必要ない」が57・5%に上り、内閣支持率も上向いている。自民党内の政局と世論のズレは大きい。
 参院選敗北は、派閥裏金事件への怒りなど党全体への不信であり、真摯(しんし)に向き合う必要がある。
 内輪もめをしている場合ではない。
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 どうしたら家計の負担を軽減できるか。
 全国消費者物価指数の伸び率は、8カ月連続で前年同月比3%台の高水準が続く。
実質賃金は6カ月連続で減少している。
 石破首相は4日の衆院予算委員会で消費税減税などを巡る政党間協議に応じる考えを示した。
 今の状況を打開するためには、与野党が歩み寄り、民意に応えていく必要がある。財源問題を含め、必要性と政策効果を吟味し、かつスピーディーな対応が求められる。
 与野党の協議機関を設置して結論を出すべきだ。
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