沖縄地方最低賃金審議会は2025年度の最低賃金(最賃)を時給1023円とするよう沖縄労働局に答申した。
 現行の952円から71円の引き上げとなり、初めて千円の大台に乗ったことになる。

 物価高は続いており、最賃水準で働く労働者の生活はなおさら厳しい。賃金の全国水準との格差を縮める上でも最賃が千円を超えたことは妥当と言える。
 県内の引き上げ幅は4年連続で過去最大となった。
 厚生労働省の中央最低賃金審議会は都道府県をA、B、Cと3区分して県ごとに最賃の目安額を提示する。今回はA、Bの目安額を63円増とした一方、沖縄を含むCは64円増とした。
 Cの目安額が東京を含むAを上回るのは初めて。背景にあるのは地域間格差の是正だ。
 これを受けた県内の専門部会では引き上げ額を巡って労使の対立が続き、部会の開催は過去最多となる11回に及んだ。
 労働者側が物価高などを理由に大幅な引き上げを求めたのに対し、賃上げによる経営圧迫を懸念する使用者側が難色を示したことがある。
 最終的には使用者側が65円、労働者側が71円の引き上げをそれぞれ主張したが折り合わず、有識者ら公益代表を加えた採決で、目安額を7円上回る引き上げで決着した。
 最賃が時給で示されるようになった2002年以降、東京との差は広がっている。若者の県外流出を防ぐためにも格差を縮める努力が求められる。

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 県内では中小・零細企業で働く人が9割を占める。
 賃金の支払いに不安を抱える企業は多く、特に人手が必要な小売業やサービス業などへの影響は少なくない。
 こうした企業への影響を和らげるため、答申では付帯決議で、最賃引き上げの原資の確保に十分な準備期間を設けることや、価格転嫁ができるような取引環境の整備、最賃改定に合わせた公契約の変更など国や県の支援の充実を求めた。
 最賃引き上げで企業が経営不振に陥るのでは本末転倒だ。
 国は生産性向上に向けた設備投資や、非正規労働者の基本給を一定以上増額した企業への助成を行うが、申請から適用まで期間を要するなど課題もある。
 助成金支給の期間短縮など地方の最賃引き上げ環境の一層の充実を求めたい。
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 石破茂首相は「20年代の全国平均1500円」を目標に掲げる。
 本年度の改定では26日現在、沖縄を含む31都道府県で答申が出され、うち沖縄の1023円は宮崎と並び最も低い。県内が目標達成するには年約9・5%の引き上げが必要となる計算だ。道のりは険しい。
 ただ、最賃は労働者のセーフティーネットである。
 物価高に負けない「強い経済」をつくるためにも、中小・零細企業を支援しながら継続的に引き上げ、賃金の底上げにつなげたい。
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