全国の都道府県知事と市区町村長を対象にした共同通信のアンケートで、介護保険サービスの提供体制の持続に97%が危機感を抱いていることが分かった。
 このまま放置すれば「介護難民」が続出し、制度は崩壊する。
介護保険を守るためにも大胆な改革が必要だ。
 47都道府県知事と1676市区町村長が回答。県内自治体も同様に危機感を強くしていた。
 理由として挙げたのが、「介護職員不足」と「介護給付費の膨張」である。
 ヘルパー不足は今に始まった問題ではない。
 政府の推計によると、2040年、65歳以上の高齢者は約4千万人となりほぼピークに達する。うち介護ニーズの高い85歳以上は1千万人を超える。
 22年度の介護職員数は約215万人。人材確保が追い付かず、40年度には57万人が不足する計算だ。
 今、手を打たなければ必要なサービスを受けられない「介護難民」が現実のものとなる。
 制度の危機は、費用面からもはっきりしている。
 介護サービス費用は、原則1割の利用者負担、40歳以上が支払う保険料、国と地方の公費(税)で成り立っている。

 利用者負担を除いた介護給付費は、00年度の約3兆2千億円から、23年度は約10兆8千億円と3倍以上に膨らむ。
 団塊の世代が85歳となる35年まであと10年。危機を乗り越えることができるか。残された時間は多くない。
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 サービスの継続に黄信号がともる中、アンケートに答えた首長の85%が、国や利用者などの負担引き上げの検討を求めた。
 検討の中身は「国の負担割合の引き上げ」が最も多く、「利用者負担2割、3割の対象拡大」「利用者負担を原則2割に引き上げ」と続いた。
 制度の持続性向上策では「賃上げを進め人材確保」を挙げた人が多かった。
 現在、高齢者が支払っている介護保険料は全国平均で月額6225円。県内はそれより高く6955円だ。夫婦で約1万4千円は、高齢世帯には重い負担である。
 首長らが言うように、公費負担の引き上げを検討すべきだ。支払い能力に応じた負担増も避けられない。
支払い開始年齢の引き下げについての議論も必要になるだろう。
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 「介護の社会化」を理念に介護保険制度がスタートして25年となる。
 今ではすっかり定着。サービスに支えられ、住み慣れた地域で1人暮らしや夫婦で暮らし続ける高齢者も多い。
 他方、人手不足などの構造的問題、介護離職といった新たな課題、制度のほころびは無視できないくらい大きくなっている。
 訪問介護サービスを巡っては、既に事業所ゼロの自治体が全国に広がる。多くの離島を抱える沖縄でも深刻な問題だ。
 「保険あってサービスなし」は足元に迫っている。
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