島しょ防衛力や、日米の共同対処態勢の強化を目的とするが、どんな状況で、なぜ必要なのか、具体的な説明はいまだにない。
野放図な訓練拡大は県民の生活を脅かしかねない。歯止めをかけるべきだ。
11日から15日間の日程で始まる実動訓練「レゾリュート・ドラゴン25」は、過去最大規模となる。沖縄を含む1道7県で、日本側1万4千人、米側5千人の計1万9千人が参加する。
新型コロナ禍の2021年に始まり、24年には約8900人で過去最大だった。一挙に2倍以上に増えたことになる。
石垣市には初めて米軍の最新型地対艦ミサイルシステム「ネメシス」と、防空統合システム「マディス」を展開する。陸自石垣駐屯地内で実射を伴わない対艦と対空の訓練を実施する。
嘉手納基地の海兵隊無人偵察機MQ9も同訓練で初導入する。洋上で、海自護衛艦、米海軍ミサイル駆逐艦などと連携する。
山口県の岩国基地には米軍の中距離ミサイル発射装置「タイフォン」を国内で初めて展開する。巡航ミサイル「トマホーク」などを搭載可能で、中国をけん制する狙いがある。
米軍は島々に小規模部隊を分散させ、移動しながら攻撃する戦略を描く。一つ一つがその戦略に欠かせない新しい装備だ。
規模だけではなく、機能も目に見える形で強化しているのが実情である。
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訓練では、県内の民間空港、港湾、公道の使用を予定している。
石垣市の浜崎マリーナでは米海軍の戦闘艇や、海自の特別機動船2隻が入港する予定がある。「レゾリュート・ドラゴン25」との関連は分かっていない。
いずれにしても、米軍による民間施設の利用が常態化している。
港の使用でいえば、日本復帰後、2007年の与那国町祖納港、09年の石垣市石垣港、10年の宮古島市平良港の3例だった。それが23年の石垣港への入港以降、訓練を理由に当たり前のように民間港を使用するようになった。
米軍は艦艇の積み荷について明かすことはなく、日本側は弾薬の有無さえ把握できない。事故が起きた際に対処できるかどうかも分からない。
懸念を残したまま、民間施設を際限なく使用することは許されない。
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今回の訓練では与那国町で当初計画した米軍の高機動ロケット砲システム「ハイマース」や、輸送機オスプレイの使用を見送り、陸自与那国駐屯地内での衛生訓練に規模を縮小する。
与那国島への地対空ミサイル部隊配備などを見据える日本政府が、8月の町長選で初当選した上地常夫町長に配慮した結果だ。
軍事一辺倒では外交努力の余地を狭め、むしろ平和を遠ざける。
住民の不安や懸念にしっかりと耳を傾け、一気呵成(かせい)で進めてきた防衛政策を検証する機会にすべきだ。