これは、マルティネスから老境に入ったと嘆くばかりの私たちへの応援歌。
 マルティネス60歳。
融通の利かない頑固者。家族なし、恋人なし、友人なし、ありがとうを言う習慣なし。職場と自宅の往復に細かなルーティンを決めて満足の人生だったのに、とうとう定年が来てしまった。そんな時、彼の人生にさざ波を立てたのは孤独死した隣人の女性。死んだ彼女に恋をすることから、マルティネスの時間は輝き始めるから面白い。
 定年も生き方も自分で決めるべし。自分で選んで覚悟すること、ささやかな喜びを手放してはいけないのだと、改めて思い出させてくれる。
 帰りに寄ったファストフードの屋外テーブルにえらく陽気なおじいさま集団を発見。何が楽しいのか(失礼)指さしあっては笑い転げ、何度目かの青春を謳歌(おうか)していた。
(スターシアターズ・榮慶子)
◇パレットで上映中
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