南城市の古謝景春市長が瑞慶覧長敏前市長のパワハラ被害を検証する第三者委員会の設置を表明した。
 聞き間違いではないかとわが耳を疑った。

 自身が設置した第三者委の結論には従わず「左寄りだ」と批判しながら、新たな第三者委を立ち上げるというのは、権力の乱用というほかない。
 古謝市長によると、元職員2人が「瑞慶覧氏からパワハラ被害を受けた。古謝氏の案件しか検証しないのはおかしい」と相談窓口に訴えたという。
 瑞慶覧前市長が退任してから3年半が経過するが、この間、前市長の「パワハラ」が問題視されたことは、ほとんどない。
 古謝市長は今になって相談があったことについて「僕が(セクハラ問題で)いじめられたから怒っているわけさ」とも語っている。
 そもそも市のハラスメント防止条例は、行政サービスの低下などを懸念し、ハラスメントを防止することで良好な職場環境を確立しようというものだ。
 市長を退任し一市民となった人を第三者委にかけることができるのか。市長にその権限があるのか。職場環境とどう結び付くのか。
 市の第三者委は5月に市長のセクハラ行為を認定し「辞職」が再発防止策だとする提言をまとめた。
 自身に向けられた辞職提言には耳を貸さず、新たな第三者委の設置で、焦点をずらそうとするのは筋違いも甚だしい。発想自体が間違っている。

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 瑞慶覧前市長のパワハラは公表された第三者委の報告書にも記載がある。
 ただ、昨年10月に設置された第三者委はハラスメント事案について、「件数が多く最重要かつ最優先されるべきもの」として、古謝市長関連の案件に絞って検証した経緯がある。
 「事実関係の解明」とともに「再発防止策の提言」を目的としていただけに、市役所に大きな影響力を持つ現職の古謝氏の調査を優先させるのは当然だ。第三者委は、古謝氏本人の言い分も聞いた上で、丁寧に事実認定をしたといえる。
 市議会が決議し市の手続きを経て設置され約850万円の税金を使った第三者委の調査結果と提言を古謝市長が受け入れない一方、さらに税金を使って第三者委を立ち上げる。整合性が取れないばかりか、正当性を欠いている。
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 古謝市長が「左寄り」と批判する第三者委は、市がお願いした「公平・中立・専門的な知識を持つ第三者」でつくられた。これに対し、新たな第三者委を自身の「親衛隊」でかためようというのなら「市政の私物化」だ。
 今回、古謝市長は、恣意(しい)的な第三者委設置という権力乱用とハラスメント防止条例の制度乱用という二重の過ちを犯そうとしている。これを止める市幹部がいないことは、地方自治の危機ともいえる。
 これ以上の混乱を避けるためにも、古謝市長は一日も早く身を引くべきだ。
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