開会中の那覇市議会一般質問で参政党の和田圭子議員が、市内小中学校のトランスジェンダーの児童生徒数や増減について質問した。
児童生徒の性自認に関する調査は、周囲にカミングアウトを強制される「アウティング(暴露)」につながりかねない。
機微な個人情報であり、触れないでほしいと考える子もいる。
そもそも性自認は多様である。なぜ、トランスジェンダーに限り知りたがるのか。
市側は「プライバシー保護に関することであり、調査はしていない」と答弁した。当然だろう。
和田氏は、ある米国人の主張を紹介する中でトランスジェンダーが「伝染する」との認識も示した。
個人の性の在り方について「伝染」という言葉を平気で使うことにも驚く。
「トランスジェンダーの生徒に対して必要な対応は心の性別に基づく配慮よりも、心の傷を治療できる心理士を紹介したり、配置して対応してもらうこと」とも発言した。
多様な性を、まるで病気のように見なす発言だ。和田氏は「差別ではない」とするが、これが差別でなくて何なのか。
一連の発言を撤回し謝罪すべきだ。
■ ■
7月の市議会議員選挙で参政党から初当選した和田氏は、かねて「性別は男と女で十分」との考えを示してきた。
そうした中のトランスジェンダー人数要求質問だ。しかも矢が向けられたのは子どもたちである。
市は10年前、他自治体に先駆けて「性の多様性を尊重する都市・なは(レインボーなは)」を宣言。性に関するあらゆる差別や偏見をなくし、誰もが安心して暮らせる都市を目指す。
市の第4次男女共同参画計画では宣言や国の「LGBT理解増進法」に基づき、多様な性を尊重する社会づくりをうたう。
こうした取り組みは、市議会も一致した方針のはずだ。
今回の質問は、当事者の人権を脅かし、安心して生活を送る権利を揺るがしかねない。
■ ■
議会の自浄作用も問われる。
質疑においても差別発言は許されない。このまま黙認するようなことがあれば「宣言」は空洞化し、市民の信頼も損ないかねない。
市も毅(き)然(ぜん)とした姿勢を示してほしい。来年度、「多様性尊重条例」の制定を目指し準備を進めている。
多様性の否定は当事者の偏見や差別につながり、社会の分断を生む。
これまで積み重ねてきた取り組みを後退させることなく、一層強化することが求められる。