「量から質への転換」を図る好機とすべきだ。
 県宿泊税条例が県議会で全会一致で可決、成立した。
2026年度中の導入に向けて大きく動き出した。
 県内で議論が始まってから十数年。新型コロナ禍や制度設計の紆余(うよ)曲折を経た末の決着だ。観光立県の財政基盤を支える柱の一つとして、効果的な活用を期待したい。
 持続可能な沖縄観光を目指す法定外目的税で、宿泊客が宿泊施設に宿泊料金の2%を支払う。税額の上限を2千円と設定。県は徴収対象となる施設を約5500カ所、年間の税収を77億8千万円と試算する。
 修学旅行や部活動などの教育活動に当たる場合は課税を免除するほか、離島住民の本島への通院などは既存事業の拡充などでサポートする。
 配分は基本的に市町村と県で1対1。独自に導入を進める北谷町や宮古島市など5市町村は、3対2とする。
 都道府県単位では初めて「定率制」を導入。ここに至るまで、県、市町村や観光業団体は議論を重ねてきた。

 県は当初、定額制を提案していたが、税負担の公平性や物価上昇に伴う税収増の期待などから、定率制の採用に至った。全国のモデルケースとしても注目を集めるはずだ。
 今後は、税収をいかに活用し、観光産業の活性化にどう生かしていくかが焦点となる。
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 県は宿泊税の使途として「観光地の環境や良好な景観の保全」「文化芸術の継承や発展、スポーツの振興」など6項目を提示。各自治体に周知し、事業計画を確認していく方針だ。
 観光は裾野の広い産業である。それだけに条例の目的に沿った使い方かのチェックが欠かせない。費用対効果についても明らかにしていく必要がある。
 新たな税は県民にも適用される。徴収に抵抗感を持つ利用者はいるはずだ。納める側が「これならば」と納得できるよう、使途を可視化し、透明性を確保することが重要である。
 観光地としての魅力を磨きながら、県民生活を守る視点も忘れてはならない。

 オーバーツーリズムによる自然環境の悪化やごみ問題への対応など、訪れる側、迎える側の双方にとって有効な使い道を探り、沖縄観光を盛り上げる機運を高めてほしい。
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 県内観光は好調に推移する。24年度に沖縄を訪れた観光客は995万2400人となり、1千万人を超えた18年度に次ぐ多さとなった。本年度は再び、1千万人を突破する見込みだ。
 国内屈指の観光地として今後も選ばれ続けるためには、安心で快適な環境資源の提供が不可欠だ。
 離島住民の負担軽減策などは、実情を踏まえた上で必要に応じた見直しが求められる。
 宿泊税が導入された後も定期的に検証し、県民や業界の声に耳を傾けながら、制度を練り上げていく必要がある。
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