中谷氏が取り上げたのは、宮古島市で行われた日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」の一部が抗議行動によって「内容の変更を余儀なくされた」こと。
宮古島市での陸自の徒歩防災訓練に対し、市民団体から拡声器を使った抗議を受けたこと。
陸自第15旅団のエイサー隊が「沖縄全島エイサーまつり」に出演するに当たり、市民団体が取りやめを要請したことだ。
中谷氏は「現場の隊員一人一人がそれぞれの持ち場で日々、懸命に取り組んでいる」ことを挙げ、「良識を持ってやっていただきたい」と注文を付けた。
記者会見という公式の場で市民団体の抗議行動に疑問をぶつける前に、大臣は自問すべきであった。
政府の沖縄基地政策が果たして他県との比較で公平・公正であったか、沖縄だけに過度の負担を押し付けてきたのではないか、と。 復帰を挟む1970年前後に在日米軍基地の沖縄への集中が進んだ。
沖縄は、本土で維持できなくなった基地の「収容場所」(川名晋史・大東文化大教授)になったのだ。
そして今、南西諸島の軍事要塞(ようさい)化が猛烈なスピードで進んでいる。
抗議行動は、そうした動きへの危機感の表れであり、市民の行動だけをあげつらうのはフェアでない。
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米兵による相次ぐ性暴力事件は、米軍基地の集中がもたらしたものだ。
離島のミサイル基地化は、戦争に巻き込まれる恐れや相手国から攻撃される懸念を生んでいる。
他県のどこかが、このように沖縄の基地の現状を丸ごと背負ったことを想像してほしい。
本土から派遣された機動隊員が抗議行動を行っている市民に対し「土人」と発言したことがある。
沖縄防衛局の非常勤職員が「きちがい」と差別の言葉を投げ付けたこともあった。
市民の抗議行動がどれほど、理不尽な「沖縄ヘイト」にさらされ続けてきたことか。枚挙にいとまがない。
今回の市民団体の抗議行動は、憲法で保障された「表現の自由」の範囲内の非暴力抵抗というべきだ。
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翁長雄志元知事は、辺野古の新基地建設を巡って県内が割れるのを深く憂慮していた。
保革を超えた政治勢力を結集して事態の打開を試みたが、志半ばで病に倒れ、急逝した。
翁長さんが生前、相手の理不尽な要求を膝を屈して受け入れるのならば、私は一人の人間として、この世界に生きる意味が薄らぐと語っていた。
政府・自衛隊には、丁寧な情報開示や、地元自治体・市民団体との対話によって、懸念に応える姿勢が求められる。
市民を敵視してはいけない。