承認によりイスラエルが態度を硬化させ、ガザの情勢が悪化することを懸念したというが、理解に苦しむ。
パレスチナはこれまでに約150カ国が国家として承認している。イスラエルの一方的な攻撃を受け、G7加盟国としては初めてフランスや英国、カナダも承認する見通しだ。
そうした中、日本が見送る背景には承認に反対する米国との関係を重視したことがある。
米国は7月以降、日本に対して複数の外交ルートで承認を見送るよう要請。石破茂首相の側近は「パレスチナには申し訳ないが、日本外交の基軸は日米同盟だ」と語った。
国際社会からの信頼を失いかねない。「属国」のような対応だ。
イスラエルのガザ攻撃はもはや虐殺だ。国連人権理事会の調査委員会は今月、ネタニヤフ首相らがパレスチナ人に対する「ジェノサイド(民族大量虐殺)」を扇動したと結論付けた。
委員会が判断の根拠としたのは、ナチスドイツによるユダヤ人虐殺の教訓から生まれた国連の「ジェノサイド条約」だ。ネタニヤフ首相は、自らの行為が同様と見なされた重みを自覚しなければならない。
国際社会の非難にもかかわらず、イスラエルは新たにガザ市中心部へ侵攻している。
承認により多くの国が連帯してイスラエルへ強い警告を表明する時だ。
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日本はイスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決」を支持する立場だ。
岩屋毅外相は21日のテレビ番組で、イスラエルの今後の対応次第ではパレスチナの国家承認やイスラエルへの制裁を検討するとした。
2年近い戦闘と人道支援の遮断による飢餓でガザの死者はすでに6万5千人を超えた。大量の大型爆弾投下で街はがれきと化している。
そうした中でも地上戦を強行するネタニヤフ首相の真の目的は「ガザの殲(せん)滅(めつ)」ではないのか。このまま攻撃にさらされれば2国家解決の前提が崩れかねない。
英国などはイスラエル極右閣僚らの入国禁止措置に踏み切っており、経済制裁も辞さない構えだ。
飢餓や大量殺害を見過ごすことは許されない。日本は今からでも方針転換すべきだ。
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米国の責任も大きい。
戦闘開始以降、停戦や飢餓状態の解消などガザを巡る国連安全保障理事会の決議案について、常任理事国である米国の拒否権行使は7回にも及んでいる。
国家承認についても「ハマスを助長させるだけ」として否定するが、そもそもハマスが台頭した背景にはイスラエルによる抑圧がある。
このまま戦闘が続けば犠牲が増えるだけだ。
一刻も早い停戦へ、大国の責任を果たさなければならない。