【名護】米施政権下から家族3世代で味を受け継いできた名護市の「ひんぷん山羊料理店2号店」が30日で閉店する。惜しむ客らに店主の宮里サクラさん(63)は「次の場所を探すことができればすぐにでも再開したい。
それまで少しお休み」と感謝を伝えている。
 およそ65年前にサクラさんの義父母の故源照さん、今年カジマヤーを迎えるヨシ子さんが開業した「ひんぷん山羊料理」。ヨシ子さんは2018年に引退したものの、サクラさんの息子が同市城の繁華街「みどり街」に2号店を出し、引き継いだ。
 その後はサクラさんが店を切り盛りするようになり老舗の看板を守ってきた。
 昔ながらのこってりとしたヤギ汁、だしのうまみが効いたヤギそば、厚切りのヤギ刺し。ヤギの価格高騰に悩まされながらも「できるだけ安く」と赤字価格で、栄養満点の「パワーフード」を提供し続けた。
 店にはさまざまな人が訪れた。決まって「ツール・ド・おきなわ」の前日に来店する客は「このヤギ汁を食べるとパワーの出方が全然違う」と言い、喉を痛めた女性客が食べ終わるころには、はつらつとした声に回復していた。
 サクラさんは「常連客が県外や外国人観光客とヤギを囲み仲良くなる姿を見るのもうれしかった」と目を細める。
 立ち退きの話があったのは今年1月。まだまだ続けようと必死に物件を探すも「周辺ではなかなか見つからない。あっても家賃が高過ぎる」と閉店を決めた。

 それでも「近ごろは若い子もたくさん来店する。何とか沖縄のヤギ文化を残したい」と意欲は消えていない。惜しまれつつ、「またいつか」とおなかを満たした客を送り出した。(北部報道部・大庭紗英)
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沖縄・名護市の「ひんぷん山羊料理店2号店」が9月30日に閉店へ ヤギ料理老舗、65年で幕
店主の宮里サクラさんが提供する昔ながらのこってりヤギ汁が人気=22日、名護市城
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