米軍憲兵隊(MP)が沖縄市内の民間地を単独でパトロールしていた。日米は4月から定期的に合同パトロールを実施するが、米軍単独はこれまでにない。

 本来、基地外の民間地の安全を守るのは日本の警察の役割だ。警察権行使にも関わる問題である。
 単独パトロールが実施されたのは今月13日午前1時から4時ごろまで。MPなど25人が「リバティー制度」の違反者を基地に帰したほか、米軍法違反者を逮捕し基地内に連行したという。
 県内で米兵による性暴力事件が相次いだことを受け、在日米軍は昨夏以降リバティー制度を強化した。
 だが、県内ではその後も米兵による事件事故が相次ぎ、制度の形骸化が指摘されている。そうした中、沖縄市などの要請を受ける形で始まったのが日米合同パトロールだ。
 ただ、現行の日米地位協定と同協定に基づく「刑事裁判管轄権に関する合意事項」では、合同パトロール中の米軍関係者の逮捕は、原則として米側が行うことになっている。民間地にもかかわらず日本の警察が逮捕できないことには疑問もある。
 この間、米軍側は取り締まりを強化している。8月にはIDカードの提示を拒んだとして、MPが初めて米兵を拘束した。
 そして今回の単独実施だ。
何人がどのような理由で拘束されたのか。米軍は、処分は各部隊で主導するとして詳細を明らかにしていない。
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 このまま米軍による警察権行使が一般化すれば、民間地で起きた米兵事件が県民に知らされずなかったことになるのではないかとの懸念は尽きない。
 米軍基地が集中する県内では、米兵関連の犯罪に県民が巻き込まれることも多い。
 過去には北谷町で在沖海兵隊員の息子の少年2人が起こした万引事件で、先に現場に到着したMPが沖縄署の要請を無視し、少年を基地内に連れ帰ったことが問題となった。
 単独実施では同様の問題が起きかねず、県警の捜査に支障を来す可能性もある。
 安心安全の確保は地元の要望だ。米兵にリバティー制度を守らせる責任は米軍にある。
 米軍は那覇市でも合同パトロールを実施したい意向だ。あいまいに拡大するのではなく、県、関係自治体、外務省、沖縄防衛局と米軍が合同で会議を開き、まず運用状況と法的問題を整理する必要がある。
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 米兵による事件事故を未然に防ぎ、地域の安全をどう守るのかとの視点に立ち、日米でその認識を共有することが求められる。
 警察権は、公共の秩序を維持するために国民の自由を制限する公権力だ。
仮に民間地での米軍の警察権行使が拡大するようなことがあれば、国の主権にも関わりかねない。
 民間地における警察権を日本側が行使する原則にするべきだ。
 日米の合意事項を見直すことが必要だ。
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