安倍晋三元首相の後継を自認し保守強硬派として知られる高市早苗前経済安全保障担当相が自民党総裁に選ばれた。
 決選投票で小泉進次郎農相を破った。

 女性の総裁は初めてだ。野党がばらばらの現状ではそのまま史上初の女性首相となる公算が大きい。
 岸田文雄氏、石破茂氏の保守・中道路線から一転、高市氏はタカ派的な発言が際立つ政治家だ。総裁選では「日本人ファースト」を掲げた参政党を意識したような外国人政策の強化を訴えた。
 しかし、人口減に歯止めがかからない中、外国人の労働力は欠かせないはずだ。過度に排除するような言動は社会の分断を招きかねない。
 靖国参拝についても「外交問題にされるべきではない」とけん制。中国や韓国との関係が再び悪化する懸念も出ている。
 少数与党下での最大の課題は野党との連携だ。高市氏は首相指名選挙までに連立拡大を実現したいと意欲を示すが、どの党と、どう連携するのか。
 総裁選では参政や日本保守党との政策協議にも前向きな姿勢を示していた。
 ただ、こうした政党との協調には公明党が強い拒否姿勢だ。
新興政党に流れた保守票を取り戻したいという内向きの論理で大衆迎合の主張に流れれば、既存の連立枠組みすら危うくする。
 今月下旬にはトランプ米大統領が来日し、次期首相と会談する予定だ。関税問題など課題は山積している。理不尽な要求には毅(き)然(ぜん)とした対応が求められる。
■    ■
 内政面ではまず物価高対策が急がれる。
 高市氏は総裁選後の会見でガソリン税の暫定税率廃止に速やかに対応するとした。所得税の見直しも掲げた一方、消費税減税については「党税調」で協議するとの発言にとどめた。
 党内の意見を集約し、国民の声にどう応えるかが問われている。
 女性で世襲議員でない高市氏。男性と同じように振る舞うことでのし上がってきた側面もあろうが、選択的夫婦別姓に反対するなど女性関連政策には後ろ向きな対応が目立つ。
 女性が首相になる道を切り開いた意義は大きいだけに、ジェンダー平等政策が後退しないよう注視したい。
■    ■
 沖縄問題についても、防衛力強化に前向きで日米連携強化を進める高市氏の下では負担増が懸念される。
基地負担軽減への道筋をはっきりと示すべきだ。
 それにしても今回の総裁選は何だったのか。
 裏金事件の教訓から自民は「解党的出直し」を掲げた。高市氏も「もう一度信頼できる党に」とするが、その部分で突っ込んだ議論はなく、結局は自民党の党内事情で政治空白が長引いた。
 高市氏は関与した議員を党の要職に付ける可能性も示唆している。
 「国民の声を丁寧に聞く」と言うなら、政治改革も前に進めるべきだ。
編集部おすすめ