VCの起源は、18~19世紀の捕鯨業界にあるとされる。危険を伴いながらも一獲千金の可能性がある捕鯨に、仲介者が富裕層から資金を集め、有能な船長に託して航海へ送り出した。ハイリスク・ハイリターンの構造は、現代のVCにも通ずる。
VCの場合、投資先となるのは、まだ上場していない将来有望なスタートアップだ。しかし、誰もが成功を確信できる事業なら、投資時点での株式評価額は高くなり、大きなリターンは望めない。そもそも銀行融資で資金をまかなえるので、VCの資金を必要としない。つまり、VCが投資するスタートアップとは、常識を覆す新しい市場を切り開く挑戦者。見通しが不透明な段階から伴走し、彼らの成功確率を高めていくこともVCの役割だ。
そんな挑戦者を支える立場にある私自身、実は挑戦者の立場でもある。スタートアップ支援の経験はあっても、投資事業は初めての挑戦。ファンド設立を目指したとき、周囲から「難しいのでは」と心配する声も多かった。それでもなんとかスタートを切れたのは、資金を託してくれた県内の事業会社をはじめとする、先人の挑戦者たちの応援があったからだ。
新しい挑戦が失敗する理由を挙げるのは簡単だ。特にSNS時代、否定的な声ほど拡散しやすく大きく響く。しかし、誰もが成功を予想できる計画は、もはや挑戦ではない。リスクを取ってこそ、新しい未来は切り開かれる。
いま沖縄には、この地に可能性を感じて国内外から集まるスタートアップがいる。彼らの挑戦を沖縄の成長に生かせるかは、地域がどれだけ「応援の連鎖」を広げられるかにかかっている。皆さまと共に、沖縄の次世代成長産業の芽を育て、世界に開かれた経済の架け橋を築いていきたい。
(フォーシーズ代表取締役)