南城市議会から不信任決議を受けた古謝景春市長は、市議会解散を選ぶという声がもっぱらだ。それは、やはり筋違いであることを指摘しておきたい。

 市長を支えてきた与党の一部を中心に、市議会は「一連の問題」で市政の混乱が長期化する状態を放置できないと不信任を突き付けた。「一連の問題」とは市長による市職員へのセクハラ疑惑に他ならない。 
 議会解散となれば直接的には不信任決議が正しいかどうかを問う。間接的には市長のセクハラがあったかどうか、つまり被害者の言っていることと、市長の言っていることのどちらが正しいかを問う選挙になりかねない。
 市民に信を問う内容だろうか。立候補者は何をどう訴えればいいのか。論争によっては今回の被害者だけではなく、過去に性被害に遭った人たちが苦しむのではないか、と専門家が懸念している。
 南城市は法律に詳しい弁護士や、社会保険労務士でつくる第三者委員会に判断を委ねた。第三者委は5月、職員から申告のあった市長によるキスや体を触る行為などをセクハラと認め、二次被害や市役所内での再発を防ぐ環境を整えるには市長が辞職するしかないと提言した。今回のような事態を想定していたのだろう。
 ハラスメントの語源は動詞のハラス(harass)で、「しつこく悩ませる」「繰り返し苦しめる」という意味を持つ。猟犬に対し、獲物が疲れ果てるまで追い詰めるようけしかける際のかけ声、古フランス語の「アラッ」に由来すると言われている。

 市議選となれば、まさにこの語源を強く思い起こす。これ以上、被害者を苦しめることは許されない。市民の分断、政治不信は深まるばかりだ。
 来年1月1日で、南城市が誕生し、古謝市長が初代市長に就任してから20年になる。その間、ハラスメントに関する見方、受け止め方は大きく変わった。そう考えると、市長個人の倫理観にとどまらず、沖縄社会の成熟度も問われていると認識せざるを得ない。(政経部長・福元大輔)

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