そんな誇り高き美しい街で繰り広げられるのは、戦争に引き裂かれ終わっていく、ある一途(いちず)な恋。レチタティーヴォという話すような歌唱法で全てのセリフが紡がれていく。「靴が少しきついわ」なんて何げないつぶやきまで、全てを歌に乗せて届けるミュージカル映画。
ミュージカル映画は演じる側も撮る側も、作曲する側も、超絶高度な技巧が必要になるというが、そんな難しさを微塵(みじん)も感じさせず、ドラマチックな展開と、ミシェル・ルグランの音楽と、カトリーヌ・ドヌーヴの美しさでのみ込んでいく。ルグランのドキュメンタリーと合わせて見ると感動もひとしお。(桜坂劇場・下地久美子)
◇桜坂劇場で上映中