心から歓迎したい。
計画の「第1段階」合意に基づき、ハマスは拘束していた人質48人のうち生存する20人を一斉にイスラエル側に引き渡した。
一方、イスラエル軍は合意ラインまで部隊を撤収した。
人質の帰還を待ち望んでいたイスラエルの家族や市民。一日も早い停戦を訴えてきたパレスチナ自治区ガザの市民。
2年に及ぶ凄惨(せいさん)な戦闘と暴力に終止符が打たれ、停戦と人質解放がようやく実現したのである。
ハマスによる2023年10月の奇襲攻撃で約1200人の市民が殺害され、約250人が人質となった。
ガザでは、この2年間の戦闘で6万7千人を超える住民が死亡し、建物という建物がことごとく破壊し尽くされた。
20項目の和平計画は米国が主導してまとめたもので、トランプ大統領がイスラエルのネタニヤフ首相を説得した。
ハマスにSNSを通して受け入れを迫り、交渉仲介役のカタールなどにも協力を求めた。カタールなどはハマス説得で重要な役割を果たした。
英仏などが相次いでパレスチナの国家承認を表明する一方、大規模なデモが世界各国で行われ、和平を求める機運はかつてなく高まっていた。
■ ■
国際社会が連携することで、合意を実現させたのである。トランプ氏の働きかけとともに、その側面も忘れてはならない。
双方が第1段階合意を誠実に履行することが、次の段階に進むための前提条件となるが、先行きは不透明だ。
今後、ハマスを武装解除する一方、戦後統治への関与は認めず、イスラエルはガザを占領、併合しないとしている。
イスラエルの中にもハマスの中にも、相手の存在を認めないような強硬派が存在する。
どちらか一方に合意を不服とする者がいて、和平計画を破綻に追い込むため、何らかの攻撃を仕掛け、事態を混乱させることもあり得る。
イスラエルとハマス双方に、和平実現への強い意志と、そのための譲歩・自制を求めたい。
■ ■
第1段階合意に合わせてエジプトではガザ和平に関する首脳会合が開かれる。
トランプ大統領やフランスのマクロン大統領、英国のスターマー首相、国連のグテレス事務総長らが参加。ガザの復興、停戦監視など広範なテーマが話し合われる予定だ。
日本も招待されているというが、新政権はまだ発足していない。退任間際の石破茂首相は出席せず、関係者を出席させる方向で調整しているという。
復旧・復興支援に積極的に関わるべきなのに、内政の混乱が外交にも悪影響を与えている。