[県歯科医師会コラム・歯の長寿学](365)
 皆さんにとって歯科医院はどんな場所でしょうか?
 「キーンって音が怖い」「臭いがイヤ」「普段の生活を叱られる」など大人も子どもも歯医者さんに行くのはイヤだな、面倒だなって人は多いですよね。確かに、私も患者さんの立場でしたらそうだったかもしれません。

 十数年前、糖尿病の専門医、西田亘先生が「生まれ変わったら歯科衛生士になりたい。歯科は患者さんの一生を診ることのできる希有(けう)な医療です」と講演で話されていたのが印象的です。
 産科、小児科、内科、外科、眼科、耳鼻科と多くの「科」はあれど、年齢・性差や症状に関係なく、歯の生えた乳幼児も、歯がなくなり入れ歯の方も、食べられない状態でも口腔(こうくう)ケアの訪問診療などで歯科はつながります。その人の一生のライフステージに「お口」を通して関わる他にない仕事だと思えるようになりました。開業40年近くたつと、親子3代の患者さんも何組かいて、それぞれの家族の歴史を来院を通して垣間見ることもあります。
 そして口の中は大変興味深く、面白くもあります。
 むし歯・歯周病のリスク、かみづらさや飲み込みづらさ、口腔内の乾燥などの原因はもとより改善・対策・予防へ至るまでの道筋、その全てに「生活習慣」が密接に関わっています。認知症や心臓疾患、がん、早産など口腔と全身との関わりがマスコミに取り上げられ、ご存じの方も多いと思います。
 当たり前のよう食べる、話す、表情を作るのは、一つ一つの筋肉の動きとそれぞれの器官(細菌までもが)がバランスを取りながら働いての結果なのです。歯科医師ゆえなのか、小さな口の中のダイナミックさに「宇宙の営み」とすら感じることがあります。
 歯科医院を困ったときの「人生の相棒」に位置付けてみてください。医療提供する側の私たちも皆さんの相棒になれるよう、日々研さんを積んでいきます。
(平良和枝・KAZUデンタルクリニック=宮古島市)
歯科医院は人生の相棒 「口」を通し一生に寄り添う 親子3代の...の画像はこちら >>
編集部おすすめ