那覇発羽田行きの全日空便で9日、離陸直後に乗客のかばんに入っていたモバイルバッテリーが発煙した。
持っていた4個のうち2個から発煙。隣の乗客がペットボトルの水を渡して煙は間もなく消し止められた。けが人はなく、同便はそのまま飛行を続けたという。
国内外での関連事故を受け、国は預け入れ荷物にモバイルバッテリーを入れることを禁止。さらに7月からは機内に持ち込む際は常に状態を確認できる手元などに置くよう求めた。
今回は煙の段階でいち早く感知できたことで大事に至らなかった。
こうした発煙・発火の多くは、モバイルバッテリーに内蔵されているリチウムイオン電池が原因となっている。
何度も充電して使える蓄電池で、ほかにもスマホやパソコン、ハンディファン、電子たばこ、電動工具など身近な電化製品に幅広く使われている。
身の回りの製品の事故の原因究明をする製品評価技術基盤機構(NITE)によると、リチウムイオン電池の中には灯油と同じくらい燃えやすい電解液が入っているという。
軽量で高性能の半面、落とす、ぶつけるなどの衝撃や圧力で内部部品が破損すると発熱したり、ガス化した電解液が発火したりする恐れがある。
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リチウムイオン電池の特性を理解し適正な利用に努めたい。
まず知っておくべきは、熱に弱いという点だ。
衝撃や圧力にも弱い。破損など少しでも異常を感じた場合は使用を中止すべきだ。
充電したまま長時間そばを離れるのも避けたい。那覇市では昨年、電動工具の発火により住宅火災が起き、2人がけがをした。
製品の普及とともに「捨て方」も課題となっている。
環境省によると、原因とみられるごみ処理施設やごみ収集車での出火や発煙は年々増え、2023年度には2万1751件に上っている。
同省は今年4月、家庭ごみとして出されるリチウムイオン電池を分別回収するよう求める通知を市町村に出した。
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ただ、自治体によって対応はまちまちだ。
県内では有害ごみとして収集する所のほか、役所窓口や電気店など協力店への持ち込みが必要な所もある。
そもそもこうした回収方法を知らない住民も少なくない。自治体には住民への周知徹底を求めたい。
リチウムイオン電池がどんな製品に使われているのか、消費者には分かりづらいことも多い。
今後は事業者側に回収とリサイクルを義務付けるなど国レベルでの対応も急ぐべきだ。