■日米地位協定
95年の事件では、米軍が地位協定を盾に米兵容疑者の身柄を日本側に引き渡すことを拒否。協定見直しを求める声が高まり、日米は同年10月、殺人や強姦(ごうかん)という凶悪犯罪に限り、日本側から起訴前の身柄引き渡しの要請があれば、米側が「好意的な考慮を払う」ことで合意した。
だが合意に基づき日本側が引き渡しを要請したのは6件にとどまる。うち沖縄は3件で、02年11月に起きた女性暴行未遂事件の1件は米側が拒否した。日本側は2008年を最後に要請していない。引き渡しの決定権は今も米側にあり、識者は捜査への影響を懸念する。
04年の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落では、県警は機体に触れることもできなかった。協定の運用に関する合意で、日本当局は米軍の同意がない限り「捜索、差し押え、検証を行う権利を行使しない」と定めるためだ。石破茂首相はかねてこうした状況を疑問視。24年の総裁選演説会では「これが主権国家なのか。
日米は15年に環境補足協定を締結。県は米軍基地周辺で高濃度で検出されている有機フッ素化合物PFASの汚染源特定に向け、基地内への立ち入り調査を求めているが、補足協定では「環境に影響を及ぼす事故が現に発生した場合」とされ、米軍は認めていない。
県内では4月以降、基地外での行動を規制する「リバティー制度」を順守させるため、米軍がパトロールを強化。だが、日米双方の法執行機関が現場にいる場合、米軍関係者の身柄は米側が拘束するのが原則で、米軍の警察権行使の拡大に懸念も出ている。
■沖縄の基地割合
県内では95年、少女暴行事件や、米軍用地の強制使用手続きに関する大田昌秀知事の代理署名拒否に端を発する形で、基地の整理縮小を求める声が高まった。
こうした中、日米両政府は同年11月、沖縄の基地負担軽減を話し合う「特別行動委員会(SACO)」を設置。翌年12月に米軍普天間飛行場の返還などを含むSACO最終報告を取りまとめた。
防衛省によると、95年から2024年1月までに7施設(5047ヘクタール)を全面返還し、米軍専用施設は31施設(1万8455ヘクタール)に減少した。15年には嘉手納より南の米軍施設の統合計画が合意され、予定されている返還が全て完了すれば28施設(1万7677ヘクタール)となる。
一方、県内移設が普天間飛行場などの返還条件となっていることに反対の声は根強い。国は23年12月に軟弱地盤改良工事に伴う設計変更申請を代執行で承認。
日米が合意した現行計画を達成しても、全国に占める割合は70・3%から69・4%への低下にとどまる見込みだ。過重な基地負担は依然として残るため、玉城デニー知事は50%以下に減らすよう求め、日米両政府に県を交えた協議の場を設けるよう求めている。
■玉城知事「軍の体質変わらず」
玉城デニー知事は20日、米兵による少女暴行事件に抗議する県民大会から21日で30年となることを受け、「米側もさまざま努力をしているが、軍隊の体質はあまり変わっているようには見えないというのが県民の感覚ではないか」と述べた。県庁で記者団に答えた。
県内では昨年以降、米兵による性的暴行事件が相次いで発覚。米軍は基地外での行動を規制する「リバティー制度」を順守させるため、今年4月から日米合同パトロールを実施するなど対策を強化している。
知事はこうした取り組みを念頭に「非常に前向きな姿勢は見えるが、制度が浸透していないことを自ら示すかのように単独パトロールをし、現場で注意喚起を行わざるを得ないということになっている」と指摘。根本的な原因の確認や再発防止策の徹底が必要とし「この30年、果たしてそういうところまで丁寧にやってきたのかは常に検証する必要がある」と話した。

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