【山城博明通信員】ボリビアのオキナワ移住地で長く愛されているソウルフードがある。牛肉の串刺しを揚げた「アンティクーチョ」だ。
広く知らしめた立役者が、豊見城市出身の金城ヤス子さん(85)=旧姓比嘉=で、2016年にはオキナワ村の条例で、食文化遺産に制定された。
 金城さんは第1移住地に入植し、農業を営んでいたが、1970年に移住地の中心部へ移ってトタン屋根の1部屋を賃貸し、収入源を模索した。
 思い付いたのが、串に刺した牛肉を油で揚げて売ることだった。ボリビアにはパクムートと呼ばれる牛の串焼きはあるが、揚げ物はなかった。
 ただし、アンティクーチョと呼び出したのが誰なのか、金城さんも分からないという。当時は現在のように専用の串が売っているわけではなく、竹に似た木を割って使った。
 早朝に肉を仕入れて、一口サイズに細かく切って味付け。衣をまぶして揚げたら、水でふかしたキャッサバを添えて提供した。
 商売は順調で1日に20キロの牛肉を売りさばいた。調理から接客、会計までを一人でこなし「若かったし、生活のために良くやったものだ。両親が肉を串に刺す仕事や、棒作りを手伝ってくれたので助かった」と振り返った。
 ボリビアでは牛肉に塩を付けて食べることが多いが、金城さんの肉料理は日本人特有の繊細な味付けで人気を博した。
一時販売をやめたこともあったが、国道沿いに一軒家を購入した後に再開。雑貨店を営む傍ら足かけ30年近く売り続け、息子夫婦にバトンタッチした。
 アンティクーチョに目を付けたのは村の議員だったデリア・アラカキさんだ。特産品が条例で食文化遺産に制定されている他地域にならい、オキナワ移住地で生まれたソウルフードとして制定につなげた。
創作料理「アンティクーチョ」 オキナワ村の食文化遺産に制定 ...の画像はこちら >>
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