「子どもたちのため、この野球場を取り壊して中学校を設立します」。
 おじさんたちが週末の草野球で汗を流した「俺たちの野球場」が消えてしまう。
中学校になるという有意義な決定に、抵抗も反抗も、全くするつもりはないけれど、なんだかどうしても、言葉にできない名残惜しさがおじさんたちを包む。
 俺たちの球場で野球ができる最後の日、いつも通りに集まって、いつものようにのんびりプレイボール。だらしない体でビールを飲みながら、張り切ることもなく、駆け抜けることもなく、同点のまま延長が続き夜を迎え、暗くなってボールが見えなくなっても試合をやめようと言うおじさんはいない。
 野球場以外にも、仕方なく手放してきた過去のあれこれをかみ締めるように、試合を長引かせるささやかなおじさんたちの抵抗に胸がキュンとしそうになる。(桜坂劇場・下地久美子)
◇11月1日から桜坂劇場で上映
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